1000冊以上の本から選んだ感動して泣けるおすすめ小説12選!

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今回は、今まで読んだ沢山の本の中から、心に残っている“私が泣いた本”を紹介します。

大人になってから実生活で泣くことはほとんどありませんが、だからこそ「本を読んで泣きたい」という欲求があり、私は日々“泣ける本”を探しています。

登場人物に共感したり、辛い境遇に胸が締め付けられたり、感動的なセリフに出会えたり、小説を読んで泣くことで心が温かくなって癒されますよね。

しかし、泣ける本にはそう簡単に出会えません。
さらに、本は読む時期やコンディションによっても感じ方が変わることもしばしば。

もちろん人によって感想が全く異なることも……。

私は本に関しては比較的涙もろい方だと自覚しておりますが、それでも今までの1,000冊を超える読書生活の中で泣いた本は数える程しかありません。

随時追記していくつもりですが、今回は今まで私が読んだ本の中から「私が泣いた本」12冊のブックレビューをお届けします。

古内一絵の「マカン・マラン」は疲れた心を解きほぐす癒しの夜食カフェ!

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街外れの路地裏にひっそりと佇む古民家風の一軒家。

そこは元エリートサラリーマンにして今はド派手な女装を身にまとうドアァグクイーンのシャールが営む夜だけ開店するお店「マカン・マラン」。

インドネシア語で「マカン」は食事、「マラン」は夜。

その名の通り“夜食カフェ”であるこのお店で提供される滋養と栄養に満ちた優しい料理は、訪れた人の疲れた心と体をほぐします。

基本的には常連しか来ない店ですが、偶然か必然か、導かれるように辿り着く人がおり、いつしか「マカン・マラン」は、“運命が変わる”夜食カフェとして人づてに知られていくことに……。

疲れた翼を休める止まり木のような、優しさと愛情に満ちた夜食カフェに、今日も様々な悩みを抱えた人たちが集まります。

人々の交流が優しくて愛おしく、じんわりと泣ける……!

「マカン・マラン」は4冊からなるシリーズ物で、合計16話からなる連作短編集です。

私がここ最近読んだ本の中でも特別に好きで、一際印象に残っています。

昨今、コロナウイルスの影響で疲労とストレスが溜まる中、シャールのおもてなしに心から癒されました。

先行きが見えない世の中に誰もが不安を抱えているものですが、「マカン・マラン」に辿り着く人も例外ではなく、様々な悩みを抱えながら人生を模索しています。

自分を見失い押し潰されんばかりの客に対して、シャールが投げかける優しく芯のある言葉は、時に甘く、時には辛く、そしてほろ苦い。

まるで料理の隠し味となるスパイスのような言葉は心に響き、しとしとと降り注ぐ小雨のように涙となって流れます。

「マカン・マラン」は盛大に号泣できる物語ではありませんが、静かに、優しく、じんわりと泣ける作品です。

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知念実希人の「ムゲンのi 」は予測不能で一気読み必須のミステリー超大作!

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眠り続ける謎の奇病「イレス」の患者を同時に3人も担当している若き女医の愛依(あい)は、全く目処が立たない治療方針に悩んでいました。

そんな中、かつて“ユタ”と呼ばれた霊媒師である祖母に相談を持ちかけると、「患者の夢幻の世界に入り込み、魂の救済“マブイグミ”をすれば目覚める」という助言をもらいます。

戸惑いながらも助言通りに行動すると、優秀な“ユタ”の血を引く愛依は本当に患者の夢幻の世界に入り込むことができました。

そこで出会ったのは、魂の分身である“うさぎねこのククル”

不思議な出会いに導かれ、人知を超える奇病と事件に挑む愛依は、ククルと共に患者たちのマブイグミに挑みます。

夢幻の世界に秘められた謎を解き明かし感動の結末を迎える、一気読み必須の幻想的なミステリー小説です。

電車の中で泣きながらも読む手を止められない!

私は普段、通勤電車の中で本を読むのですが、この作品を読んだときは流れる涙を止めることも読む手も止めることもできず、開き直って泣き散らかしながら読み進めました。

「心はやはり胸にあったんだな」と改めて気付かされたほど、胸の奥がジンと熱くなった作品です。

私はファンタジー小説をあまり読みなれておらず、物語に入り込むまで少し戸惑いましたが、ミステリー要素と相まってぐんぐんと引き込まれていきました。

次々と巻き起こる予測不可能な展開に心を鷲掴みにされて、家族の愛情に心温まるミステリー超大作です。

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“本の中に愛が見える”ハートフルストーリー!成田名璃子の「東京すみっこごはん」

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母親に先立たれ、訳あって祖父とふたり暮らしをしている女子高校生の楓(かえで)は、イジメに悩み、あてもなく街をさまよっていました。

そんな中、偶然通りかかった商店街の裏路地定食屋のような古ぼけた一軒家を見つけます。

そこは、その日集まったメンバーでくじをひいて料理当番を決め、手作り料理を一緒に食べる共同台所“すみっこごはん”

シロウトが作るので美味しくない日もありますが、くじ引きで当たった人はすみっこごはんに伝わるレシピを元に家庭料理を作ります。

知らない人とくじ引きをして料理を作り、出来上がったものを一緒に食べる食堂があるなんて……!?

共に食卓を囲むワケありの人々が巻き起こす出来事を通じて、だんだんと明らかになっていく“すみっこごはん”の秘密。

人々との温かな交流と、美味しい家庭料理によって元気を取り戻していく連作小説です。

家庭料理の温かさが胸に沁みて泣ける……!

「東京すみっこごはん」は何年も前から好きな本でしたが、結婚して子供ができてから再読したところ、ひときわ泣ける作品だと気づきました。

物語の中に愛が見えるような優しさに溢れた作品で、心がホッと穏やかな気持ちになります。

親の立場になってから読むと、今まで気づかなかった無念な気持ちと切なさが増して、電車の中で何度も泣いてしまいました。

人々とのつながりと、美味しい家庭料理の大切さに改めて気付かされます。

どんなに辛いことがあっても、美味しいご飯を食べれば大丈夫!
そんな気持ちにさせてくれる元気の出る小説です。

登場人物がまるで自分の家族のようで、物語を読み終えても放っておけないほど親しみを感じます。

私は「東京すみっこごはん」が大好きで、特にオススメの心温まる泣ける本です!

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原田マハの「まぐだら屋のマリア」は生きる希望を取り戻していく再生の物語

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神楽坂の老舗料亭で修行を積んでいた主人公の紫紋(シモン)は、料亭での偽装事件をきっかけに夢や仲間を失い、現実から逃げ出します。

知り合いが一人もいない場所に行きたい……そこで人生を終わらせよう。

そんな思いで遠くへ遠くへとさまよい続けた紫紋が辿り着いたのは、空と海と山と道路以外はなにも無い、崖っぷちにポツンと建った「まぐだら屋」という小さな食堂。

紫紋はそこで食堂を切り盛りしているマリアという女性と出会うことに。

マリアは突然現れた素性のわからない一文無しの紫紋に食事をさせ、眠る場所まで与え、救いの手を差し伸べます。

成り行きからまぐだら屋で働くことになった紫紋は、料理を通じて人の役に立つことで自身が癒され、どん底から生き直す勇気を得ていきます。

様々な出会いの中で人を思いやり、生きる希望を取り戻していく再生の物語です。

深い愛情に包まれる温かさに溢れた作品!

「まぐだら屋のマリア」は、食事の大切さ近くにいる人への思いやりなど、生きていく上で当たり前のことを思い出させてくれる作品です。

私はこの本を読んで、何度もマリアに癒されて泣きました。

特に、物語の中盤に登場する居候の青年が母親に対する自分の罪を告白するシーンでは、心にズシリとくるほど重く辛い内容が自分のことのように感じられ、マリアの赦しの言葉が胸を打ち、何度読み返しても泣いてしまいます。

母との関係に溝ができてしまい大切にできずに後悔した経験が私にはあって、母の愛情に気付けなかったいたたまれなさと、未だにそれを引きずってしまう自分の未熟さを思い知らされるのです。

私も親になり子供ができたことによって、初めて親の気持ちが理解できたように思います。
また、妻を見ていても感じますが、母親の愛情は偉大です。

誰にでも帰る場所があって、母はいつでも自分の味方でいてくれている。

そんな深い愛情に包まれる温かさに溢れた作品です。

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東野圭吾の「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は優しい気持ちが心に灯る笑って泣ける本!

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悩み事相談を請け負い様々な人を救ってきた「ナミヤ雑貨店」。

店を閉めてからしばらく経ち、あばら屋のように朽ち果てたその古い家に、悪事を働いた3人組が逃げ込んできました。

夜が明けるまで身を隠すことにした3人が埃だらけの店内を物色していると、店のシャッターの郵便口から突然手紙が投げ込まれます。

店内に忍び込んでいることがバレたのかと驚いた3人ですが、気づかれた様子はなく、外に人がいる気配もありません。

突然投げ込まれた手紙に戸惑いつつ中身を読んでみると、それは雑貨店宛に書かれた悩み事相談でした。

今まで誰にも相談などされたことがない3人は、いい気になって返事を書いてみると、再び手紙が届きます。

まるで時空を超えて届いたかのような手紙に顔を見合わせ戸惑った3人は、下手に関わることを恐れながらも再び返事を書くことに……。

それがナミヤ雑貨店で再び起きる“奇跡”の始まりでした。

悩み事相談を請け負い様々な人を救ってきた雑貨店で起きた、時空を超えた奇蹟の物語です。

笑って泣ける綿密で爽快なストーリー!

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は、ツイッターで知り合ったなおこさん(@sakanao283) という方から教えていただいた泣ける本。

ハートフルで、コミカルで、さらにはミステリアスでもあり……、様々な特筆すべき要素がふんだんに詰め込まれています。

時空を超えるSF的設定、小悪党3人組のシュールな笑い、人に言えないシリアスな悩み、そして感動の涙……。

この様々な要素がお互いの邪魔をせずに共存し、なおかつ1つずつ絡み合って、全てに繋がっていきます。

物語は5章からなる“連作短編”という形式ですが、章をまたいで伏線を回収していく様子は爽快の一言!
読み終わった後に「いい本を読んだ!」という気持ちでいっぱいになります。

特に第2章の「夜更けにハーモニカを」が切なくて、いつの間にか涙が溢れていました。

第1章のコミカルな雰囲気から一転してのシリアスな展開と、そこで語られる音楽への想いと最後まで信じ抜いた己の道。

そこに交差するナミヤ雑貨店の悩みごと相談が絶妙でなんとも言えません!

一部の無駄もない素晴らしい構成物語の中に引き込まれました。

哀しい話ですが胸に響き、優しい気持ちで満たされ思わず涙が溢れる一編です。

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思い切り泣いた心温まる命のドラマ!夏川草介「新章・神様のカルテ」

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主人公の栗原一止は信州にある「24時間365日対応」で患者を受け入れる本庄病院に6年間勤務したのち、より良い医師になるために信濃大学医学部の大学院生として入局します。

内科医としての激務をこなしながら、大学院での研究や生活を支える当直アルバイトに明け暮れ2年の月日が流れました。

大学病院とは不条理なもので、最先端の技術と大勢の医師を抱えながら、ルールや建前にとらわれてスムーズな治療に結びつかない矛盾を抱えた巨大組織です。

それでも患者のことを第一に思い、奮闘を続けてきた一止でしたが、29歳の膵癌患者の治療を巡り、医局の御家老(ごかろう)と恐れられる准教授と激しく衝突してしまいます。

医局内での自分の立ち位置など気にも留めず、患者の心身を第一に考え立ち向かっていく青年内科医の熱き想い。

その情熱は患者だけでなく関わる医師や病院までも変えていきます。

厳しい医療現場の中で繰り広げられる“日常”と、ささやかな“希望”を描いた心が震える命のドラマです。

じわじわと感情の波が押し寄せる静かな感動作!

「神様のカルテ」はシリーズもので今作は5巻目になります。

今まで読んできた感想を正直に言うと、少し癖があるため“泣ける本”という印象はありませんでした。

しかし、今作を読んでびっくり!

筆者の文章力が格段に上がっており「日本語が美しい」と感じるほど!

物語に深くのめり込み、こんなに泣いたのは久しぶりというくらい思い切り泣きました。

シリーズをまだ読んでいない方にお伝えしたいのは、この5巻目の「新章・神様のカルテ」を読むためにシリーズ全作を読む価値があるということです。

じわじわと感情の波が押し寄せる静かな感動作で涙なしには読み進めることはできません!

物語の中では特別な奇跡が起きるわけではなく、描かれるのはあくまで病院での“日常”です。

ストーリーに派手さはありませんが、私たちが実際に生活をしている何も起きない“日常”にこそドラマが詰まっており、それ以上に共感できることなんてありません!

「このような本に出会えるから読書はやめられない」としみじみと感じた1冊で、それくらい読む価値がある、読んで良かったと思える作品でした。

読み終わった後も余韻でしばらく本を持ち歩いていた程です。

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小坂流加「余命10年」は、切実な描写に胸を打たれる恋愛小説

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20歳の茉莉(まつり)は、数万人に1人という不治の病に倒れ、余命は10年であることを知ります。

20代の女性が抱える余命10年という絶望的な未来。

何かをはじめても志半ばで諦めなくてはならず、未来に対する諦めから死への恐怖は薄れ、淡々とした日々を過ごす毎日。

そんな中、親友から勧められて始めた趣味に情熱を注ぐようになり、偶然の出会いからしないと心に決めていた恋に落ちていきます。

生きたいと願う希望がそのまま死という絶望へと繋がる逃れられない運命。

衝撃のタイトルとその結末にいつの間にか涙が流れる切ない恋愛小説です。

文章にムラがあるが、見せかけではない魂の叫びを感じる

「余命10年」の著者である小坂流加(こさかるか)さんは、文庫化された本作の編集が終わった直後、病気が悪化し刊行を待つことなく2017年に逝去しました。

詳細は書かれていないので推測ですが、この物語の主人公と同じ病気であったのではないかと思われます。
それくらい病気と死に対する絶望感にリアリティがある作品です。

正直なところ文章にムラがあり、お世辞にも文学的に優れた作品とは言えません。

文章の(特に会話の)稚拙さや、一人称の視点の切り替えが悪く混乱するところなど、読みにくさを感じる部分もあります。

358ページにも及ぶ長編なので、細部まで推敲できなかったのかもしれません。

しかし、それを踏まえても著者のリアルな感性がそのまま物語に現れており、心に残る魂の叫びのように感じました。

読んでいるとただ悲しいのではなく、その切実な葛藤や苦悩に胸を突かれ、いつのまにか涙が流れています。

普通の小説なら茉莉の考えや決断はただのヒステリーと片付けられそうなところ、「余命10年」という長くて短い運命に閉塞感や焦燥感などリアルな重みがあって、その耐えきれない絶望に共感を感じるほどです。

そう思わせる気迫が文章から伝わってくるため、ここ数年で読んだ本の中でもインパクトが強く、「生と死」について否応無く考えさせられました。

心に残る衝撃的な作品です。

じんわりと心が温まる短編集!東直子の「とりつくしま」

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この世に未練を残して死んだとき、あなたが望んだ「物」にとりついて現世に戻ってくることができます。

それが「とりつくしま」。

その案内をする「とりつくしま係」は、あなたの希望を聞いて「とりつくしま」の契約をしてくれます。

役所のように手続きを済ませると、死んだあなたは「なりたいと望んだ物」にとりついて、もう1度だけこの世を体験することができるのです。

物になってまわりを見たり、人の声を聞いたりすることはできますが、あなたから何かを伝えることはできません。

また、その物が壊れたり半分以上消失したりすると、「とりつくしま」もおしまいです。

愛する妻を見守りたい、大好きなママと遊びたい、大切な息子のそばでほんの少しだけ過ごしたい。

「死」と向き合い「もしも〜だったら」という世界を味わえる、切なくて温かい短編小説です。

静かな温もりに心休まる連作短編集

私がこの作品で涙したのは「青いの」という章に描かれる子供があまりにけなげで胸を締め付けられたからです。

「青いの」は、幼稚園に通う子供が“大好きだった青いジャングルジム”になってママが遊びにくるのを待つ話。

初めて読んだときは結婚もしていなかったので当然自分の子供もおらず、泣くことはありませんでした。

しかし、実際に自分の子供ができてから再読してみると、なんとも堪らない気持ちになってしまいました。
親になって感じ方が変わったのですね。

幼い子供は浅はかで、いじけやすく、そして素直であるが故にけなげです。

「ぼく、いい子にしてるから、会いに来て」とママを待ち続ける姿はいじらしく、とにかく切なすぎました……。

子供を持つ親ならばその想いをひとしお感じるはずです。

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七月隆文「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」は2度読みたくなる恋愛小説!

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美大に通う南山高寿(みなみやまたかとし)は、通学電車の中で一目惚れをした女の子に意を決して声をかけます。

相手の女の子は福寿愛美(ふくじゅえみ)。

「一目惚れをした」と告白をされたその別れ際「また会える?」と聞かれた愛美は突然泣き出し、高寿に抱き着きます。

驚く高寿はこの時の涙の理由を知る由もありませんでした。

翌日、再会した二人は意気投合し、やがて付き合い始めることに……。

初めてデートした時、初めてお互いを名前で呼び合った時、初めて手を繋いだ時、愛美は何故か涙を零します。
高寿は不思議に思いながらも優しく受け止め、2人は愛情を深めていきます。

そんなある日、「隠してきたことを全部話す」と打ち明けられた愛美の秘密は想像もできないようなことでした。

そして2人の運命はすれ違いはじめます。

奇跡の運命で結ばれた2人を描く、甘く切ない物語。

彼女の秘密を知った時、きっと最初から読み直したくなりますよ。

2度読みたくなり、2度目こそ泣ける

この作品は、物語の設定(トリック)が単純でありながら良くできており、想像の斜め上をいきます。

恋人が病気になったり、死んでしまったりといった恋愛小説の王道とは少し毛色が異なり、SF的な要素があることが特徴です。

そのため、初めて読むときと再読した時とでは、感じ方が変わります。

この書評を書くために改めて読み直しましたが、私は序盤で泣きました。

2人が初めて出会った日の別れ際に、高寿が「また会える?」と聞いたところがピークです。

初読では意味がわからず泣くようなシーンではないのですが、2巡目では切ないシーンにしか見えません。

同じ文章を読み直しているのに、感想がまったく異なる点が面白いですね。

1巡目では設定についていくのに気を取られてしまうので、2巡目の方がより楽しめるはずです。

読み始める前は、“軽めでサクサクと読める恋愛小説”くらいにしか思っていませんでしたが、いい意味で期待を裏切られました。

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北川恵海の「ちょっと今から人生かえてくる」は爽快で泣ける人生応援ストーリー!

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この作品は2015年に刊行され映画化もされた「ちょっと今から仕事やめてくる」のアナザーサイドストーリーです。

前作では、ブラック企業での仕事に追い詰められ命を投げ出そうとしていた隆(たかし)が、「ヤマモト」と名乗る男と出会い人生を見つめ直していく話でした。

その続編となる今作の主人公は、なんとブラック企業で隆を追い詰めた張本人である先輩の五十嵐(いがらし)です。

自分の営業成績のために後輩を蹴落とし退職にまで追い込んだ五十嵐ですが、彼もまたブラック企業での仕事に疲れ果て限界を迎えていました。

そんなある日、疲弊しきっていた五十嵐は通勤電車で倒れそうになったところを見知らぬ男「ヤマモト」に助けられます。

再び登場する「ヤマモト」と五十嵐の新しい物語と、前作では語られなかった裏エピソードが今、明らかに……!

仕事に悩み、日々に迷う人たちに勇気を与える人生応援ストーリーです。

ブラック企業に勤め、人生に疲れた方にオススメ!

「ちょっと今から人生変えてくる」は、ブラック企業に勤めている方や、ブラック企業卒業生にオススメの作品です。

とても読みやすい作品なので、普段本を読まない方や、仕事に疲れて本を読む余裕がない方でもハードルは低いはず……!

親しみやすい温かさを感じる文章は、まるで家族や友人と話しているかのようです。

今回、改めて前作から読み直しましたが、温もりが胸に沁みてしんみりと泣けました。

スカッと爽快な展開は読んでいて気持ちよく勇気付けられます。

仕事に疲れた時に、そっと寄り添ってくれる優しい作品です。

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辻村深月の「凍りのくじら」は私の1番好きな本!

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主人公である高校生の理帆子(りほこ)は傲慢で達観しており、表面上は周りの人に合わせながら心の中では孤立している女の子。

どこにいても執着できない、誰のことも好きじゃない、誰とも繋がれない……要するに感じが悪い性格です。

はじめはこの主人公にはまったく共感ができません。

そのため、「この分厚い本をどう読み進めたものか……」と、誰もが手を止めてしまいそうになるはず……。

そんな状況を払拭してくれるのが物語の端々に登場するドラえもんです。

ドラえもんのひみつ道具にちなんだストーリーと、藤子・F・不二雄先生の面影が随所に描かれ、物語に引き込む起爆剤の役割を果たします。

「写真を撮らせてほしい」と言って現れた別所(べっしょ)という青年との出会いによって、少しずつ変わっていく理帆子。

別所の優しさが、孤独だった理帆子の心を少しずつ癒し、別所の知人である郁也(いくや)と多恵(たえ)との出会いによって、さらに物語は穏やかに進んでいきます。

ところが、不穏な警告が鳴り響き、物語は思いも寄らぬ方向に急転下していきます。

いつの間にか物語にのめり込み、主人公に共感していく少し不思議な世界観。

理帆子の成長と光に満ちた世界を描いた希望の物語です。

好きな人にオススメしたくなる本

「凍りのくじら」を読んで涙を流す人がどれほどいるのかわかりません。
そもそも泣くような本ではないような気がします。しかし、私は何回も泣きました。

「泣ける本」と評価してしまうと薄っぺらく聞こえるかもしれません。

それでも、「凍りのくじら」が私の心に深く刺さり、何度読んでも涙を流してしまう本だったという事実はお伝えしておきたいのです。

特にクライマックスでテキオー灯(ドラえもんのひみつ道具)が出てくるときは、理帆子に感情移入しまくりでボロボロ泣きました。

いい本を読んだとき誰かにおすすめしたくなりますが、「凍りのくじら」は違います。
この本は私が好きな人にだけおすすめしたくなる本です。

「面白い本」と「好きな本」の位置付けは少し異なります。

誰が読んでも面白く、ベストセラーになって映画化までされるような本と、いつまで経っても自分の心に残っている本は違いますよね。

「凍りのくじら」は私の好きな本です。
自分の弱みを見せられる私の好きな人に読んでほしいと思える作品です。

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こだまの「ここは、おしまいの地」は泣くほど笑える自伝的エッセイ!

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こだまさんの「ここは、おしまいの地」は、文喫の“選書”サービスを利用して「泣ける本」をリクエストした時に選んでもらった1冊です。

ところが、「泣ける本」をリクエストしたにも関わらず、この本の帯には「爆笑しました」というコメントがあり、どう考えても「泣ける本」には見えません……。

本当に泣けるのか困惑しながらも読み進めていったところ、納得、この本は「泣けるほど笑える本」だったのです!

シュールで笑いのセンスが光るこの作品は、ただ笑えるだけでなく、家族や友人の温かいエピソードにいつの間にか涙が溢れそうにもなります。

「感動して泣ける本」としては異色ではありますが、「泣ける本」として紹介せずにはいられない1冊です。

飾らず素直に受け入れられる言葉たち

「ここは、おしまいの地」を読んで、私はこだまさんの文章が大好きになりました。

すっと心の中に入ってくる飾らない自然体の言葉たち。
絶妙のタイミングで散りばめらる鋭い表現。

こんなにも自然に笑わせられると元気が出ますね。
自虐的な内容も鼻につかず笑いに変換されて描かれるのが良いところです。

また、ただ笑わせられるだけでなく、しんみりと描かれる家族や友人の話は温かく、やさしく胸を打つところも……。

全体を通しておかしみの要素が強いですが、メリハリがあり、“隠と陽”両方の性質を持っています。

そういった意味では「涙が出るほど笑える本」というだけでなく「いつの間にか泣いている本」でもありそうで、この本を読んで思わず涙をこぼした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私は「涙が出るほど笑える本」と解釈しましたが、「泣ける本」として紹介されたとしても充分に納得ができる作品です。

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まとめ

今回は12冊の「私が泣いた本」を紹介しました。

実はこれ以外にも候補があったのですが、読み直してみると泣けなかったという作品が多く、やはり読む時期や状況によって感想は変わるものですね。

有川浩さんの「レインツリーの国」は、初読ではめちゃくちゃ泣いた記憶がありましたが、今回再読したら泣けませんでした。

同じく村山由佳さんの「天使の卵」も高校生の頃に号泣したはずなのですが……。

これらの作品はまた別の機会に紹介します。
特に村山由佳さんの作品は思い入れが強すぎるのでここでは書き切れません!

今回紹介したのは12作品だけですが、このページは随時追記して更新していきます。

泣ける本の情報も探しておりますので「この本こそは!」という作品がありましたら教えて頂けると嬉しいです。

今回紹介した本の感想やコメントなどもお待ちしております!

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