本の中に愛が見えるハートフルストーリー!成田名璃子の「東京すみっこごはん」

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今回紹介する作品は、成田名璃子(なりたなりこ)さんの「東京すみっこごはん」です。

本の中で愛が見えるような心温まるこの作品は、文庫書き下ろしのシリーズ物で、2019年6月現在では第4巻まで刊行されています。

この作品は、手作り料理を共に食べる共同台所である“すみっこごはん”を通じて、美味しい家庭料理と人々の温かい交流が描かれる連作短編集です。

イジメに悩む女子高生、婚活に悩むOL、人生を見失ったタイ人など、ワケありの人々が巻き起こす人生のドラマから目が離せません!

最近読んだ本の中でも特にオススメしたい、私の大好きな作品です。

今回は、成田名璃子さんの「東京すみっこごはん」のブックレビューをお届けします。

年齢も職業も異なる人々が集う“共同台所”で繰り広げられるドラマ!

商店街の脇道に佇む定食屋とおぼしき古ぼけた一軒屋。

そこは、その日集まったメンバーがくじ引きをして料理当番を決め、手作り料理を共に食べる共同台所“すみっこごはん”。

年齢も職業も異なる人々が集い、“すみっこごはん”のレシピの中から家庭料理を作ります。

訳あって祖父と2人暮らしをしている女子高生の楓(かえで)は、イジメに悩み、あてもなく街をさまよっていました。

そんな中、偶然通りかかった路地裏ですみっこごはんを見つけます。

知らない人とくじ引きをして料理を作り、出来上がったものを一緒に食べる食堂があるなんて……!? 一体誰がどんな目的で作ったのか、常連でも知る人はいません。

傷つき悩みを抱えるワケありの人々が巻き起こす様々な出来事を通じて、だんだんと明らかになっていく“すみっこごはん”の秘密。

人々との温かな交流と、美味しい家庭料理が心を解きほぐす連作小説です。

優しさが沁みわたる“愛が見える”作品!

私は「東京すみっこごはん」が大好きです。

なぜなら、本の中で優しさが溢れており、心が温かく、前向きになれるからです。

楓をはじめ登場人物が抱える孤独や切なさ、はたまた自信のなさや諦めは、形は違えど誰もが抱く胸の痛みで、まるで自分の傷のように心が疼きます。

そんな中、すみっこごはんで出会う人々は温かく、親子でも夫婦でもない他人同士がつむぐ愛情が心に深く感じ入り、いつの間にか何度も泣いてしまいました。

物語の中で親心を随所に感じ、家族や家庭料理の大切さに改めて気付かせてくれる、一家団欒のような愛情に溢れた作品です。

はじめて読んだときは結婚して間もなくで子供もいませんでしたが、子供が生まれてから読むとまた感じ方が変わりますね。

親の立場で読むと、子供にごはんを作ってあげられない無念さと切なさが増して、涙腺が緩くなってしまいます。

どんなに辛くても美味しいご飯を食べれば大丈夫!

“すみっこごごはん”にはいくつかのルールがあって、その1つは「すみっこごはんに伝わるレシピノートから料理を選び、なるべくレシピ通りに作る」というもの。

作られる料理はお味噌汁、肉じゃが、ハンバーグ、ナポリタン等の馴染み深い家庭料理です。

レシピノートにはワンポイントアドバイスや時短テクニックが口語体で書かれており、書いた人の息づかいが聞こえてくるよう。

美味しい家庭料理を作るヒントで溢れています。

“すみっこごはん”で作られる料理は、作る人によってたまに失敗することもありますが、身近でありながら本格的でとても美味しそう!

そんな料理を見ていると、たとえどんなに辛い日でも、「美味しいご飯を食べれば大丈夫! なんとかなる!」と思わせてくれます。

美味しいごはんが生きる活力を与えてくれることに気付かせてくれる、元気が出る小説です!

愛すべきキャラクターが物語の中で生きている!

成田名璃子さんの作風を一言で表すと“心温まる”ですが、どの作品もただのハートフルストーリーではありません。

物語の中に“憂い”があって、かさぶたを剥がされたような痛みを感じるのです。

以前紹介した「不機嫌なコルドニエ」を読んだ時も、同じような感想を抱きました。

sutekinayokan.hatenablog.com

本を読んで感じるその痛みは、登場人物たちの優しさによって癒され、まるで家族と話しているかのような安心感を与えてくれます。

こんなにも登場人物を身近に感じるのは、著者の思いが込められたキャラクターたちが物語の中で生きているから。

それどころか、物語を読み終えても放っておけないくらい気になってしまいます。

読み込むごとにその思いは強くなる一方で、思わず著者の成田名璃子さんにツイッターでつぶやいてしまうほど……!

最新刊の4巻は楓にとって試練の話だったのですが、早く5巻でなんとかしてあげてほしいです……!

名璃子先生! 続編楽しみにしております!
(早く書いて!笑)

「料理」がキーワードの“泣ける本”に癒される!

「東京すみっこごはん」は「料理」「食事」がキーワードの泣ける本です。

似たようなジャンルで、以前に書評記事を書いた原田マハさんの「まぐだら屋のマリア」という作品があります。

「まぐだら屋のマリア」も料理と美味しい食事に癒されるストーリーですが、主人公が生きる勇気を取り戻していく姿に心震わされる、今まで読んだ本の中で1番泣いた作品です。

美味しいごはんは人を癒す力がありますね。
そして、同じ釜の飯を食べる仲間は家族のようなもの。

この2つの作品は、家族の大切さに気付かされると同時に、仲間の大切さにも気付かせてくれます。

「東京すみっこごはん」が好きな方には「まぐだら屋のマリア」もオススメの作品です!

ぜひ読んでみてください!

sutekinayokan.hatenablog.com

乃木坂文庫2019夏に選ばれました!

2019年7月1日から始まる乃木坂文庫2019夏!

乃木坂文庫とは、人気アイドルグループ乃木坂46のメンバーの撮り下ろしによるスペシャルカバーが、44作品の人気小説のカバーとしてずらりと並ぶ文庫フェアです。

「東京すみっこごはん」はこのたび乃木坂文庫のフェア作品の1冊に選ばれました!
ちなみに、本のカバーは梅澤美波(うめざわみなみ)さん! 素敵です!

このフェアをきっかけにまた沢山の人に読んでもらえたら嬉しいですね。

どのように陳列されるのかも楽しみです!

まとめ

「東京すみっこごはん」は、共同台所に集うワケありの人々が、美味しい家庭料理と温かな交流によって元気を取り戻していく人間ドラマです。

読み進めるごとに優しさが沁みわたり胸が温かくなって、何度も泣いてしまいます。

たとえどんなに深い悩みを抱えていても、美味しいご飯を食べれば大丈夫! なんとかなる!
そんな気持ちにさせてくれる元気の出る小説です。

私は「東京すみっこごはん」の家族のような温かさが大好きで、その温もりは長い間私に寄り添ってくれました。

登場人物に親しみを感じ、その行く末にも目が離せません!

心がホッとする大人気シリーズです!