古内一絵の「マカン・マラン」は疲れた心を解きほぐす癒しの夜食カフェ!

f:id:yuuri_hikari:20200527222153j:plain

この本のPOINT!

読むと元気が出る夜食カフェの連作短編シリーズ!

優しい人々の交流に心が温まり、静かに、じんわりと泣ける……!

装幀・装画が美しい!

「マカン・マラン」は、全4巻(16話)からなる人気の連作短編集!

元エリートサラリーマンにして今はド派手女装を身にまとうシャールが贈る、じんわり心が温かくなる夜食カフェのお話です。

私はこの本を読んで救われた気持ちになりました。
人情味溢れる優しい人々との交流に、愛おしさを覚えます。

「マカン・マランに出会えて良かった」と思うのは、決して物語の登場人物の話だけに止まりません。

疲れた心に沁み渡るシャールのおもてなしに、きっとあなたも癒されるはず……!

今回は古内一絵さんの「マカン・マラン」のブックレビューをお届けします。

素敵な本に出会える喜びをお伝えしたいです。

疲れた心を解きほぐす癒しの夜食カフェ「マカン・マラン」

街外れの路地裏にひっそりと佇む古民家風の一軒家。

そこは夜だけ気まぐれに開店するお店「マカン・マラン」

インドネシア語で「マカン」は食事、「マラン」は夜。
その名の通りここは夜食カフェですが、普通の飲食店とは一線を画します。

ドラァグクイーンのシャールがドレス専門店を営む傍ら、お針子たちの賄いとして始めたのがこのお店の由縁。

基本的には常連しか来ませんが、偶然か必然か、導かれるように辿り着く人も……。

ここで提供される健康に配慮された料理には優しさが溶け込んでいて、訪れた人の心と体の疲れをじんわりと癒します。

いつしか「マカン・マラン」は、“運命が変わる”夜食カフェとして人づてに知られていくことに……。

疲れた翼を休める止まり木のような、優しさと愛情に満ちた夜食カフェに、今日も様々な悩みを抱えた人たちが集まります。

人々の交流が愛おしく、じんわりと泣ける……!

私は「料理」がテーマになっている小説がもともと好きではありますが、こんなにも心に残る作品に出会えるとは思ってもみませんでした。

5年前に刊行された本ですが、ここ最近読んだ中でも特別に好きな作品です。

コロナウイルスの影響で疲労とストレスが溜まる中、シャールのおもてなしに心から癒されました。

誰もが心に闇を抱えているものですが、「マカン・マラン」に辿り着く人も、様々な悩みを抱えながら人生を模索しています。

トランスジェンダーを抱えるシャール自身、様々な困難周囲からの失望に晒されながら生きてきました。

自分を見失い押し潰されんばかりの客に対して、シャールが投げかける言葉は、時に甘く、時には辛く、そしてほろ苦い。

それはまるで料理の隠し味となるスパイスのよう。

その優しいスパイスは心に響き、しとしとと降り注ぐ小雨のように涙となって流れます。

「マカン・マラン」は盛大に号泣できる物語ではありませんが、静かに、優しく、じんわりと泣ける作品です。

美しい装幀と装画は一見の価値あり!

f:id:yuuri_hikari:20200527113511j:plain

「マカン・マラン」は装幀(そうてい)装画とても素敵!

装幀は鈴木久美さん、装画は西淑(にししゅく)さんが担当しています。

本のカバーデザインやスピン(栞となる紐)、花ぎれ(背の接着面に貼り付けた布)などをつける作業を「装幀」と言いますが、この装幀を楽しむことも読書の醍醐味のひとつです。

ちなみに「マカン・マラン」の装幀を担当した鈴木久美さんの作品には、原田ひ香さんの「まずはこれ食べて」や、髙森美由紀さんの「山の上のランチタイム」など私が装幀に惹かれて購入した本が沢山あります!

最近だと、本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの「流浪の月」の装幀も、鈴木久美さんが担当していますね。

やはり、装幀が素晴らしい本は、それだけで信頼できます。

本を選ぶ新しい指標として「装幀」を眺めるのも楽しいですよ。

是非、物語と一緒に美しい装幀装画も楽しんでください!

「マカン・マラン」との出会いは御書印巡りがきっかけ!

私が「マカン・マラン」と出会ったのは、2020年3月から始まった御書印プロジェクトがきっかけです。

御書印とは、簡単にいえば寺院でもらえる御朱印の本屋版。

sutekinayokan.hatenablog.com

日暮里にある「パン屋の本屋」の御書印が「マカン・マラン」の「足りなければ満たせばいい 空っぽなら埋めればいい」という一節でした。

f:id:yuuri_hikari:20200416223035j:plain

御書印に書かれたこの言葉が気に入り、その場で「マカン・マラン」を買ったことがこの本と出会ったきっかけです。

今までにない新しい本との出会い方に、楽しみが広がりますね!

御書印は2020年6月から参加書店を91店舗に増やし、どんどん拡大しています。

私は都内22書店の御書印を今までに集めてきましたが、コロナウイルスに十分注意しながら御書印巡りを楽しみたいです!

sutekinayokan.hatenablog.com

まとめ

「マカン・マラン」は、派手なメイクと衣装に身を包むドラァグクイーンのシャールが贈る、夜食カフェの物語。

美味しい料理とシャールの人柄が、訪れた人を優しく癒します。

シャールの達観した人生観は、世の中をしたたかに生き抜く為に必要なこの上ないスパイスで、病みつきになること間違いなし!

私はこの本を読み終わった時、「マカン・マランに出会えて良かった」としみじみと思いました。

密やかに降る小雨のように、静かに泣ける私の大好きな作品です。