こだまの「ここは、おしまいの地」は泣くほど笑える自伝的エッセイ!

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今回紹介するこだまさんの「ここは、おしまいの地」は、文喫の“選書”サービスを利用して「泣ける本」をリクエストした時に選んでもらった1冊です。

ところが、「泣ける本」をリクエストしたにも関わらず、この本の帯には「爆笑しました」というコメントがあり、どう考えても「泣ける本」には見えません……。

本当に泣けるのか困惑しながらも読み進めていったところ、納得、この本は「泣けるほど笑える本」だったのです!

今回は、こだまさんの涙が出るほど笑える本「ここは、おしまいの地」のブックレビューをお届けします。

こだまさんの“異常な日常”が描かれる自伝的エッセイ

「ここは、おしまいの地」は20章からなる短編集で、それぞれにこだまさんの半生が描かれたエッセイです。

この本で描かれる出来事はおそらく実話だと思いますが、はっきり言って常軌を逸しており、それでも色鮮やかな日常で、異世界の物語のような錯覚さえ覚えます。

1文1文が面白く、言葉の端々にセンスを感じ、読み始めてすぐに文喫の書店員さんの意図に気付けるくらい“笑いの瞬発力”がある作品です。

笑える作品といえばリリーさんの「誰も知らない名言集」が思い浮かびますが、それは思い切り“変態”に振り切れていてわざと面白おかしく書かれているんですよね。

sutekinayokan.hatenablog.com

一方、こだまさんの「ここは、おしまいの地」は、一見するといたって“普通”です。

その普通の中に“文才”というオブラートに包まれたギリギリ想像できる日常範囲内での異常が隠れています。

野犬に噛み付かれる父や、車に轢かれる祖父の話など、通常では笑えないシーンでも爆笑させられるのは「さすが!」としか言いようがありません。

ちなみに、野犬に噛み付かれた父がボロッボロの足を引きずりながら動物病院に駆け込むシーンでは、「ここは動物にやられた人が来る場所ではない」と先生に叱られて追い返される姿に思わず吹き出してしまいました!

「ここは、おしまいの地」は、そんなシュールな笑いが楽しい作品です。

飾らず素直に受け入れられる言葉たち

この作品を読んで、私はこだまさんの文章が大好きになりました。

すっと心の中に入ってくる飾らない自然体の言葉たち。
絶妙のタイミングで散りばめらる鋭い表現。

こんなにも自然に笑わせられると元気が出ますね。
自虐的な内容も鼻につかず笑いに変換されて描かれるのが良いところです。

また、ただ笑わせられるだけでなく、しんみりと描かれる家族や友人の話は温かく、やさしく胸を打つところも……。

全体を通しておかしみの要素が強いですが、メリハリがあり、“隠と陽”両方の性質を持っています。

そういった意味では「涙が出るほど笑える本」というだけでなく「いつの間にか泣いている本」でもありそうで、この本を読んで思わず涙をこぼした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私は「涙が出るほど笑える本」と解釈しましたが、「泣ける本」として紹介されたとしても充分に納得ができます。

孤独を抱える人に読んでほしい

こんなにも紙面では饒舌なこだまさんですが、子供の頃から人を見れば顔を背けて逃げ出すほどの内向的な性格だったといいます。

人付き合いが下手で、どことなく虚無的なこだまさんですが、私はその文章に共感を覚える点が沢山ありました。

私は子供の頃は非常に明るかったにもかかわらず、年齢を重ねるごとにだんだんと暗くなった過去を持ちます。

成人を過ぎる頃には携帯電話を解約し、大学の卒業旅行には1人でイタリアに旅立ち、就職活動も2社しか受けなかったほど内向的……というか世の中に対して斜に構えた人間になっていました。

そんな孤独を抱えた私ですが、文章を書いたり読んだりすることで入り込める世界が大好きで、自分の中に渦巻く心の声を文字にして吐き出したい欲求をいつも抱えています。

そのため、この作品のように自分の世界を作り出せるこだまさんに憧れを感じずにはいられません。

「ここは、おしまいの地」は、孤独を抱えている人にぜひ読んでほしい作品です。

“こんな風に生きている人がいる”という事実に私はとても癒されました。

私たちのはるか先を行く摩訶不思議なこだまさんの“日常”に、思わず心を許してしまう自分に気づきます。

こだまさんの「夫のちんぽが入らない」は話題沸騰の私小説!

こんなにも心を奪われる作品にはなかなか出会えないので、こだまさんの他の作品も気になります。
代表作は何と言ってもタイトルが衝撃的なあの作品……!

漫画化やドラマ化もされて話題になっている「夫のちんぽが入らない」です。

何度聞いても物凄いタイトルですが、「ここは、おしまいの地」を読んだ私はこだまさんが書いたというだけで信頼感があり、名作の予感しかしません!

タイトルだけで、シュールな笑いと夫婦生活での苦悩やそれを上回る愛情が見えてきます。

書店で買うのは少し恥ずかしい気もしますが、ネットで買えば関係ないですね。

ちなみに私は気にせず本屋で買いました(笑)

花粉症のマスクが役立った数少ない事柄です。
さすがに本のカバーは厳重にかけてもらいました!(笑)

読みたい本が多すぎて順番待ちしている本がたくさんあるのですが、今読んでいる本が終わったら順番待ちをすっ飛ばして先に読んでみたいと思います!

文喫の書店員さんに感謝!

文喫の“選書”サービスを利用した1番の収穫はこだまさんの本と出会えたことです。

ここ最近読んだ本の中でもずば抜けて面白かったので、良い本を紹介して頂いた文喫の書店員さんには本当に感謝しています。

それにしても「日本文学のフィクションの泣ける本をできれば文庫本で」というリクエストに対し、どう考えてもそのどれにも属していない本を紹介された時はびっくりしました!

フィクションでも文庫本でもないこの本の帯には、ホストみたいな人(←ゴールデンボンバーの歌広場淳さん)の写真と共に「爆笑しました」というコメントまであるんですよね……。

初めは何事かと困惑しましたが、「笑いすぎて涙が出る本なんだ!」と気付いた時には、より一層この本が素敵に輝いて見えました!

文喫の書店員さんの機転の良さに感激です。
友達になりたいと本気で思いました。

素敵な本を紹介して頂きありがとうございます!

文喫の“選書”サービスはオススメです!

リクエストしたテーマに沿って書店員さんが本を選んでくれる文喫の“選書”サービス。

今回紹介して頂いた「泣ける本」7冊の内6冊を読み終えましたが、どの本も特徴的で魅力があり(中には合わない本もありましたが)、とても面白い体験ができました。

“選書”サービスに興味がある方は試しに利用してみることをオススメします!

どんな本が選ばれるのかを待つだけでも楽しみでワクワクしますよ。

今回紹介して頂いた「ここは、おしまいの地」は、普段エッセイを読まない自分ではまず出会うことのできなかった本なので、自分の視点以外で選んでもらうことの有益性を感じることができました。

好きな本に出会えることは幸せですね。

sutekinayokan.hatenablog.com

まとめ

こだまさんの「ここは、おしまいの地」は、泣くほど笑える少し変わった自伝的エッセイです。

文喫の書店員さんがリクエストした本を選んでくれる“選書”サービスを利用して「泣ける本」の1冊として紹介してもらいました。

文章の端々に言葉のセンスを感じる作品で、シュールな笑いが堪りません!

また、ただ笑えるだけでなく、しんみりと描かれる家族や友人の話は温かく、優しく胸を打つ場面も……。

1章が短く非常に読みやすい作品のため、普段読書をされない方にもオススメです。

ここ最近読んだ本の中でもピカイチに面白い目が覚めるような作品でした!