六本木に新しくできた話題のスポット“文喫”は「入場料を支払う」本屋です。
先日ようやく訪問することができ、とても居心地の良い空間に再訪を誓ったものですが、その際に「選書」のサービスがあることを知りました。
なんでも「リクエストした本を書店員さんが選んでくれる」サービスとのこと。
※私が利用した際は無料でしたが、より良いサービス作りのため2019年8月27日より1回1,000円の選書サービス料がかかるようになりましたのでご注意ください!
これは面白そうだということで、さっそく日頃から探している「泣ける本」をリクエストしてみました。
本のプロが選ぶ「泣ける本」は一体どんな作品なんだろうかとワクワクしながら訪問すると、紹介された本は全部で7冊。
普段自分が選ぶのとは全く違った視点で選書された作品は非常に興味深く、とても新鮮で面白い体験をすることができました!
今回は文喫の「選書サービス」の体験レビューをお届けします。
六本木にできた入場料のある本屋
文喫とは「文化を喫する」をテーマに掲げた入場料のある本屋さんです。
場所は六本木交差点のすぐ近く。
地下鉄日比谷線の六本木駅3番出口からすぐのところにあります。
文喫のもっとも大きな特徴は入場料1,500円(税抜)を支払うという営業スタイルです。
決して安くはありませんが、1度訪問するとその価値を実感できますよ!
店内に置かれる本は自由に読むことができ、もちろん本屋なので購入することも可能です。
喫茶店と比べると静かでフリードリンクもあり居心地が良いので、本が好きなら1日中過ごせます。
そんな文喫の詳しい訪問レポートはこちらの記事をご覧ください。
選書サービスで「泣ける本」をリクエスト!
今回、リクエストした本を書店員さんが選んでくれる“選書”というサービスを利用しました。
「泣ける本が読みたい」「笑える本が読みたい」「オススメの詩集を教えて」など、本のコンシェルジュでもある書店員さんが1,000(税抜)で本を選んでくれます。
利用方法は、来店の3日前までに電話(03-6438-9120)でお願いするだけ。
リクエストするのは少し恥ずかしい気もしますが、丁寧に応対してくれるので興味がある方は遠慮なく利用しましょう!
今回私は「泣ける本」をリクエストしましたが、普段自分が選ぶものとは全く違った視点で選ばれる本はとても興味深いものでした。
選書の電話応対の流れ
電話で選書をお願いすると、下記の質問をされるのであらかじめ考えておくとスムーズです。
- 読みたい本のテーマは?
- 「フィクション」か「ノンフィクション」か?
- 「日本文学」か「外国文学」か?
- 好きな作家はいるか?
質問内容は選書の決め手となる情報ですね。
私の場合は「泣ける本」についてかなり具体的なリクエストした為か「何故泣ける本を探しているのか?」とも聞かれました。
「ブログを書いており、自分以外の視点でどのような本が選ばれるのか興味がある」という旨を説明しましたが、「失恋したから」「子供に勧めたいから」などの理由によって選ばれる本が変わるのかと。
今回私は「日本文学のフィクションの泣ける本をできれば文庫本で」というリクエストをしました。
それに加え、今まで読んだことがない本を知りたかった為、好きな作家は敢えて外してもらうことに。
どんな本が選ばれるのか当日まで楽しみでワクワク……!
この時点で既に「選書サービスをお願いして良かった」と思いました。
選書をお願いした本は買っても買わなくてもどちらでもよし!
当日、受付で「選書をお願いしている〇〇です」と伝えるとその場でリクエストした本を手渡してくれます。
今回選んでもらった本は全部で7冊。
通常は3冊以上を目安に用意してくれるそうです。
今回はたくさん選んでくださいました! ありがとうございます!
とりあえず座席に全て持ち寄り、ぱっと見て買うもの4冊と買わないもの3冊に分けました。
この時に「とても良いな」と感じたのは、写真のように手書きで本の感想が書かれたメッセージを入れてくれてたところ。
私のために考えて選んでくれたのかと思うと嬉しいですね。
普段読んだことがないジャンルの本でもつい読んでみたくなります。
買うものはじっくり持ち帰って読むとして、“買わない方”に選んだ本をさっそくその場で読んでみました。
どんな本を選んでくれたのかというワクワクと、気に入らなければ買わなくてもいいという気楽さが良いですね。
文喫の選書サービスで選んでもらった「泣ける本」7冊!
今回「選書」サービスで選んで頂いた「泣ける本」7冊を紹介します。
「リクエスト外ですが良かったら」と2冊のハードカバーと外国文学の本も入れてくれましたが、よっぽど良い作品なのかと逆に気になります……!
読書心をくすぐる紹介の仕方。
なかなかやりますね……!
ということで、今回選んで頂いた作品を早速見ていきましょう!
いとうせいこうの「想像ラジオ」は東日本大震災を背景にした“生と死”の物語!
今回紹介して頂いた7冊の中で、1番読んでみたいと感じたのがこの作品です。
不思議なタイトルと優しげなカバーイラストがいい感じで惹かれました。
どうやら東日本大震災を背景にした作品のようですが、2011年は入院や転職など私の人生のターニングポイントとなった年でもあり興味深いです。
3月7日に訪問したため、日付的にもタイムリーな作品を選んでくれたのかもしれません。
購入して早速読んでみたところ、第一印象とは全く異なる感想を抱きました。
正直に言うと物語の意味がわからず思考停止寸前でしたが、解説に目を通してみると意外にもこの作品の奥深さが見えてきます。
深く読み解かないと理解ができない難しさがありますが、生者と死者の新しい関係を描いたメッセージ性の強い作品です。
こちらの詳しいブックレビューはこちらをご覧ください。
宮下奈都の「遠くの声に耳を澄ませて」は、「人生の岐路」がテーマの短編集!
この本は未読のはずですが、どこかで見たことがあるようなイラストが気になった作品です。
本を開く前から何故か懐かしい……。
この作品もカバーイラストが良いですね。
知らない本において装丁の重要性を今回改めて感じました。
宮下奈都(みやしたなつ)さんの本自体が初読ですが、こちらも購入したのでじっくり読むことにします。
あらすじを見る限り「人生の岐路」がテーマの短編集のようですが、短いストーリーで果たして泣くことができるのかということも興味深いです。
知らない作家の本に出会えるのも“選書”サービスの醍醐味ですね。
ECD+植本一子の「ホームシック」は語りきれない家族の愛を描いたエッセイ
ラッパーであり作家としても活躍しているECD(イー・シー・ディー)さんが、写真家である妻の植本一子さんに出会い家族を作るまでの日常を描いたエッセイです。
パッと見て「買わない方」に選んだのですが、せっかくなのでその場で読むことに。
この作品は今の時代を生きる家族の話で、絶賛子育て中の私には共感できる部分も多くあっという間に読んでしまいました。
飾らない文章は読みやすく、すっと読み飛ばしてしまいそうになりますが随所に優しさで溢れていて、語りきれない家族への愛を垣間見た気がします。
「泣ける」か「泣けないか」で言うと泣けませんでしたが、普段の自分では絶対に読むことがなかった作品なので新鮮でした。
今回読めて良かったです!
重松清の「その日の前に」は、日常にある幸せの意味を見つめる連作短編集!
重松清さんの「その日の前に」は既に読んだことがある作品です。
「死」をテーマにしたこの作品は、インターネットで「泣ける本」と検索すると書評ブログなどで良く紹介されています。
私はかなり前に読んだので内容がおぼろげですが、良い本だったと記憶しており紹介されて納得の1冊です。
元々は友人に勧められて読んだので、今回勧められたのは2度目ということに。
泣ける本か確認する為に、時間がある時に再読してみます。
寺山修司の「寺山修司少女詩集」は少女の心と瞳で紡いだ愛の詩集
この作品は少女の心と瞳がとらえた愛のイメージを詩人・寺山修司さんが豊かな感性で紡いだ詩集です。
おじさんが少女の心で描いたのかと考えるとフクザツな気持ちになりますが、詩を読んでみると表現力が豊かで驚かされます。
沢山の詩の中で最も印象に残ったのは、18ページの「カモメに関する序章」での1文。
「世界における水分の絶対量は一定しているので、誰かが涙を流すと、そのぶんだけ、海の水が少なくなるのである。」
なかなか奥が深く引き込まれます。
どんなに泣いても洪水にはならないし溺れないから好きなだけ泣けばいい。
泣くことは潮の満ち引きと同じ自然なことなのだと、気丈な孤独さを感じました。
今回は買わずに帰りましたが、ふとした泣きたい時に読みたくなりそうな1冊です。
こだまの「ここは、おしまいの地」はちょっと変わった自伝的エッセイ
こだまさんと言えば「夫のちんぽが入らない」で話題になった作家さん。
(私は未読なので内容は知りません)
今回「日本文学のフィクションで泣ける本をできれば文庫本で」とリクエストしたのですが、そのどれにも属さないという破天荒っぷり。
しかも、ゴールデンボンバーの歌広場淳さんが帯のキャッチコピーを書いており、そこには「爆笑しました」とあるんですよね。
え? 本当に泣けるのですか?(笑)
これは逆に読みたくなってしまいますよね。
ということでこの本は購入することに。
今まさに読んでいるのですが、最初の20ページくらいを読んで気付きました。
文喫で“泣ける本”として紹介してもらったこだまさんの「ここは、おしまいの地」
— ユウ@ホンダナ!運営中 (@sutekinayokan) March 13, 2019
これは確かに泣ける本だ!
まだ20ページ位しか読んでないけど笑い過ぎて涙が出そう! pic.twitter.com/F60sm8gEzV
この本は涙が出るほど笑える本なのですね……!
「泣ける本」のリクエストに対して「笑いすぎて涙が出る本」を紹介してくれる文喫の書店員さんのセンスに脱帽します!
“選書”サービスの魅力を目の当たりにしました。
とても面白い本だったので、是非書評ページもご覧ください!
ジョン・ウィリアムズの「STONER(ストーナー)」は日本翻訳大賞受賞作!
こちらも「日本文学のフィクションで泣ける本をできれば文庫本で」というリクエストに対してほとんど当てはまらない作品です。
しかも2,600円もするなんて…。
第1回日本翻訳大賞受賞作らしいですが、そんな賞があること自体を初めて知りました。
ここまで得体が知れないと、よっぽど面白い本なのかと逆に期待が高まります!
外国文学をほとんど読んだことがなく、良いきっかけと思いこの本も購入しました。
普段、通勤電車の中で本を読むので、長編のハードカバーだと持ち運びにくく読むのに時間がかかるかも知れませんが……。
家に本がありすぎて本棚が溢れかえっているので、普段は好きな作家以外は文庫本しか買いません。
そんなイレギュラーな買い物までさせる文喫の“選書”サービスは、個人的にはとても楽しむことができ大満足でした!
まとめ
文喫の“選書”サービスは、本のコンシェルジュでもある書店員さんがリクエストしたテーマに沿って本を選んでくれる無料のサービスです。
今回はじめて利用しましたが、普段自分が選ぶのとは全く違った視点で選書された作品は非常に興味深く、とても面白い体験をすることができました!
書店員さんの手書きのメッセージは温かく、レジをお願いする際の少しの時間でも親しく話すことができたのは本という架け橋があったからこそ。
"買わない"に選んだ本をその場で読んできましたが意外と自分の好みに合致していたので、買った本にも期待が高まり、読むのが楽しみです!
文喫に訪問する際は、ぜひ“選書”のサービスを利用してみてはいかがでしょうか?
普段知りえなかった本との素敵な出会いが待っているかもしれませんよ!