こだまの「夫のちんぽが入らない」は夫婦生活の苦悩と愛情を描いた私小説!

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今回紹介する作品は、こだまさんの「夫のちんぽが入らない」です。

何度見ても強烈なタイトルがとびきりインパクトのあるこの作品。
下世話な話なのかと思いきや、夫婦生活での“苦悩”や“愛の形”がひたむきに描かれています。

正直に言うと、書評を書くべきか非常に迷った1冊でもありました。

なぜなら、こだまさんのあまりにも正直な愛と性の告白を前に、私自身も正直にならなくてはならず書き終える自信がなかったからです。

それでもこの作品が少しでも広まることで、私のように救われる方がいるかもしれないと考え、書評記事を書くことにしました。

今回は、こだまさんの夫婦生活での苦悩やそれを上回る愛情が描かれた私小説「夫のちんぽが入らない」のブックレビューをお届けします。

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【ネタバレ】本多孝好の「真夜中の五分前」の考察を徹底解説!

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今回の記事では、前回投稿した「真夜中の五分前」の考察をネタバレ前提で徹底解説します。

この作品は恋愛小説ですがミステリー要素が強く、真相が読者に委ねられ漠然とした終わり方をするのも特徴のひとつ。

私はなんとも悲劇的な「side-B」が受け入れられずに長い間モヤモヤとしていました。

今回は、そのモヤモヤ解消のため、私の考察を徹底的に解説します!

ネタバレ前提であらすじを解説しますので、この本を読むつもりの方はこれ以上読み進めるのをお控えください。

本多孝好さんの喜劇と悲劇を描いた恋愛小説「真夜中の五分前」のネタバレ徹底解説をお届けします。

前回の書評記事はこちらからどうぞ!

sutekinayokan.hatenablog.com

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本多孝好の「真夜中の五分前」は運命に翻弄された喜劇と悲劇を描く恋愛小説

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先日、知念実希人さんの「レフトハンド・ブラザーフッド」を読んで、印象的だった双子の物語があったことを思い出しました。

それが今回紹介する本多孝好さんの「真夜中の五分前」です。

一卵性双生児が抱える“アイデンティティを揺るがす苦悩”を描いたこの作品は、「side-A」と「side-B」に分かれた上下巻構成なのですが、2冊の物語は喜劇と悲劇ほどの差があります。

初めて読んだのは15年くらい前になりますが、私は悲劇的な「side-B」がどうしても受け入れられず、読み返すにもためらいを感じるほどでした……。

若い頃に受け入れられなかった「side-B」ですが、今読んだらどんな感想を抱くのか気になり久しぶりに読んでみると、やはり当時とは違った感想を抱き、今まで気づかなかった視点にも気づくことができました。

今回は、運命に翻弄された喜劇と悲劇を描く本多孝好さんの恋愛小説「真夜中の五分前」のブックレビューをお届けします。

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知念実希人の「レフトハンド・ブラザーフッド」は兄弟の絆を描く疾走感溢れる長編ミステリー!

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今回紹介する作品は知念実希人さんの疾走感溢れる長編ミステリー「レフトハンド・ブラザーフッド」です。

双子の弟の左手に亡くなった兄が宿り、殺人事件の冤罪を晴らす為に2人で真犯人を捜し求める奇妙な逃避行を描いたこの作品は、“兄弟の絆”が鍵となり探偵役は左手の兄という斬新さ!

今まで見たことのないこの物語は、ミステリーとしてだけでなく、サスペンス青春小説としても楽しめます。

450ページを超えるなかなか分厚い長編ですが、のめり込んでは続きが気になり、あっという間に読んでしまいました!

疾走感が心地よく、どんでん返しのラストは切なくも爽快で救われる作品です。

今回は、知念実希人さんの「レフトハンド・ブラザーフッド」のブックレビューをお届けします。

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ジョン・ウィリアムズの「ストーナー」は平凡な男のありふれた人生を描いた美しい物語

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今回紹介する作品は、文喫の“選書”サービスを利用して「泣ける本」をリクエストした際に選んでもらった1冊、ジョン・ウィリアムズの「ストーナー」です。

「日本文学のノンフィクションの泣ける本をできれば文庫本で」というリクエストに対し、「リクエスト外ですが良かったら」と外国文学のハードカバーでしかも2,600円もするこの作品を紹介されたとき、驚きましたがすぐに買おうと決めました。

本の装丁に惹かれたこともありますが、あえてこの条件でも紹介してくれたところに魅力を感じたのがその理由です。

期待して読んでみると、読むごとに引き込まれるストーリーは切なさに溢れており、文章が美しく翻訳も素晴らしい作品でした。

50年以上前に刊行されたとはとても思えない、現代社会においてもリアリティーを感じさせる、平凡な男のありふれた人生を描いた作品です。

今回は、ジョン・ウィリアムズの「ストーナー」のブックレビューをお届けします。

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こだまの「ここは、おしまいの地」は泣くほど笑える自伝的エッセイ!

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今回紹介するこだまさんの「ここは、おしまいの地」は、文喫の“選書”サービスを利用して「泣ける本」をリクエストした時に選んでもらった1冊です。

ところが、「泣ける本」をリクエストしたにも関わらず、この本の帯には「爆笑しました」というコメントがあり、どう考えても「泣ける本」には見えません……。

本当に泣けるのか困惑しながらも読み進めていったところ、納得、この本は「泣けるほど笑える本」だったのです!

今回は、こだまさんの涙が出るほど笑える本「ここは、おしまいの地」のブックレビューをお届けします。

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いとうせいこうの「想像ラジオ」は東日本大震災を背景にした「生と死」の物語

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先日、文喫の“選書”サービスを利用して「泣ける本」のリクエストをしてきました。

「想像ラジオ」はその時に紹介して頂いた本の中で、1番読んでみたいと感じた作品です。

やさしげなイラストに親しみを感じ、不思議なタイトルに惹かれました。

この作品は東日本大震災を背景にしており、非常に取り扱いが難しい題材を扱っていることも興味深く感じた要因のひとつ。

早速読んでみたところ、第一印象とは全く違った感想を抱きました。

正直に言うと「私には合わない」と感じてしまい、何を伝えたいのかわからない不思議な展開に思考停止寸前……。

あまりにも掴みどころがなかったので解説に目を通してみると、意外にもこの作品の奥深さが見えてきました。

深く読み解かないと理解ができない難しさがありますが、生者と死者の新しい関係を描いたメッセージ性の強い作品です。

今回は、いとうせいこうさんの「想像ラジオ」のブックレビューをお届けします。

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文喫の“選書サービス”を利用して「泣ける本」をリクエストしてみた!

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六本木に新しくできた話題のスポット“文喫”は「入場料を支払う」本屋です。

先日ようやく訪問することができ、とても居心地の良い空間に再訪を誓ったものですが、その際に「選書」のサービスがあることを知りました。

なんでも「リクエストした本を書店員さんが選んでくれる」サービスとのこと。

※私が利用した際は無料でしたが、より良いサービス作りのため2019年8月27日より1回1,000円の選書サービス料がかかるようになりましたのでご注意ください!

これは面白そうだということで、さっそく日頃から探している「泣ける本」をリクエストしてみました。

本のプロが選ぶ「泣ける本」は一体どんな作品なんだろうかとワクワクしながら訪問すると、紹介された本は全部で7冊。

普段自分が選ぶのとは全く違った視点で選書された作品は非常に興味深く、とても新鮮で面白い体験をすることができました!

今回は文喫の「選書サービス」の体験レビューをお届けします。

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七尾与史の「偶然屋」は軽くて過激なブラックユーモアミステリー!

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先日、五十嵐貴久さんの「1981年のスワンソング」を私に紹介してくれた読書家である会社の上司が「面白い作品を読んだ」と、また本を貸してくれました。

それが、七尾与史(ななおよし)さんの「偶然屋」。

「運命だと思っていた出来事は実はすべて仕組まれていたのかもしれない!?」と思わせるブラックユーモアに富んだミステリーです。

偶然を装って仕組まれた出来事に人々が洗脳され争いを始める姿が恐ろしく、かなりの問題作でもあるこの作品。

タイトルや装丁だけを見ると軽いテンポで語られるエンタメ小説かと思いきや、意外にも過激な内容で度肝を抜かれます。

気心の知れた上司からオススメされた本ですが、癖が強いので好き嫌いがはっきりと分かれるかも……!?

今回は、ブラックユーモアミステリーの名手・七尾与史さんが贈る予測不能の長編ミステリー「偶然屋」のブックレビューをお届けします。

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辻村深月が贈る映画ドラえもんの書き下ろし長編小説「のび太の月面探査記」

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今回紹介する本は辻村深月さんが脚本を手がけた映画ドラえもんの書き下ろし長編「のび太の月面探査記」です。

辻村深月さんといえばドラえもんを愛する作家として知られ、著書の「凍りのくじら」ではストーリーのいたるところにドラえもんのひみつ道具が登場しました。

「凍りのくじら」は私が今まで読んだ数多くの本の中で1番好きな作品です。

その為、本屋で辻村深月さんの新作を見つけ、しかもドラえもんの書き下ろし長編だなんて文字を見たときは思わず興奮してしまいました。

しかし、期待が高まり過ぎた状態で読み始めてすぐに「大人になってから読むドラえもんを素直に楽しめるだろうか」という不安がよぎります。

序盤、やはりアラフォーには「映画ドラえもん」は厳しいかと挫けそうになりましたが、中盤から終盤にかけてはいつの間にか物語にのめり込んでいきました。

「映画ドラえもん」を観ているかのような懐かしさを感じ童心に返った気持ちです。

また、ストーリーが意外と奥深く考えさせられた一面も……。

今回は、辻村深月さんの「のび太の月面探査記」のブックレビューをお届けします。

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思い切り泣いた心温まる命のドラマ!夏川草介の「新章・神様のカルテ」

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今回紹介するのは夏川草介さんが贈る医療ドラマのベストセラー「新章・神様のカルテ」です。

"新章"とタイトルに付いている通り、「神様のカルテ」というシリーズ作品なのですが、まず最初に私が声を大にして伝えたいことがあります。

それは、本作を読むためだけに「神様のカルテ」シリーズ全作を読む価値があるということです!

このシリーズを今まで読んできた感想を正直に言うと、文章に独特な癖があるため少し読みにくい印象がありました。

しかし、今作では筆者の文章力が格段に上がり読みやすくなっただけでなく、「こんなに泣いたのは久しぶり」というくらい感動して涙を堪えきれなかった程……!

そんな4年ぶりの5巻目となる本作は、前作まで長らく勤めた本庄病院から舞台が変わった新章となり、大学病院編がスタートしました。

大学病院という巨大な組織の中で挑む厳しい医療の現場と、家族や友人と穏やかに過ごす御嶽荘(おんたけそう)での暮らし。

涙なしには読み進めることのできない、心温まる命のドラマ「新章・神様のカルテ」のブックレビューをお届けします。

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三浦しをんのイチオシ作品!「ロマンス小説の七日間」は新感覚恋愛小説!

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三浦しをんさんと言えば直木賞作家として有名ですが、著書の中でも私がひときわ好きな作品があります。

それが「ロマンス小説の七日間」

正統派ロマンス小説の雰囲気も味わえる一風変わった恋愛小説で、型破りな展開がとにかく笑えます!

それだけでなく、三浦しをんさんの親しみのある文章は「本を読んでいる」というより、まるで友人と会話を楽しんでいるかのよう。

1人で本を読んでいるはずなのに本との会話が止まらない新感覚のラブコメディ!

そんな和気藹々たる物語が楽しめる「ロマンス小説の七日間」のブックレビューをお届けします。

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