こだまの「夫のちんぽが入らない」は夫婦生活の苦悩と愛情を描いた私小説!

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今回紹介する作品は、こだまさんの「夫のちんぽが入らない」です。

何度見ても強烈なタイトルがとびきりインパクトのあるこの作品。
下世話な話なのかと思いきや、夫婦生活での“苦悩”や“愛の形”がひたむきに描かれています。

正直に言うと、書評を書くべきか非常に迷った1冊でもありました。

なぜなら、こだまさんのあまりにも正直な愛と性の告白を前に、私自身も正直にならなくてはならず書き終える自信がなかったからです。

それでもこの作品が少しでも広まることで、私のように救われる方がいるかもしれないと考え、書評記事を書くことにしました。

今回は、こだまさんの夫婦生活での苦悩やそれを上回る愛情が描かれた私小説「夫のちんぽが入らない」のブックレビューをお届けします。

結ばれたいのに結ばれない“苦悩”と“愛の形”

いきなりですが、こだまさんは夫のちんぽが入りません。
本気で言っています。

この作品はこだまさんと夫の私生活について描かれた実話です。
物語はこだまさんと夫が出会うところから始まります。

人口と同じくらいが生息するとんでもない田舎の集落から抜け出し、大学に通うために始めた一人暮らし。

右も左もわからない引っ越しの初日に、同じアパートに住む青年が声をかけてくれました。
彼は無遠慮で、自由で、あっという間にこだまさんの生活に入り込んでいきます。

初対面なのに勝手に部屋に上がり込み、カラーボックスを組み立て、ダンボールを開け始め、断りもなくペットボトルのお茶を飲む縦横無尽ぶり。

そんな彼と出会ってわずか4日目で付き合うことになり、初めて交わろうとした夜に衝撃が走ります。

でん、ででん、でん。

まるで淫部で太鼓を叩くようにちんぽは入りません。

この日からちんぽが入らない苦悩に満ちた生活が始まります。

結ばれたいのに結ばれない不安な気持ちと、そこで生まれた愛の形。
結果、2人は精神的な結びつきを強め結婚します。

“普通”ではないことに苦しみ続けた夫婦生活と、それを上回る愛情を描いた私小説です。

あまりにも正直な愛と性のひたむきな告白

「夫のちんぽが入らない」はタイトルで既に衝撃を受けますが、内容は更に上をいきます。

“衝撃”の上を表す単語はなんだろうと、思わずグーグルで検索したくなるような内容です。

ここまでひたむきに“愛と性”について語った作品が今まであったでしょうか。
心の深くまで染み込んでくる“言葉の雨”のような作品だと私は感じました。

こだまさんの作品の特徴は何と言っても「普通そうに見える異常性」ですが、その絶妙なズレ具合が対岸の火事を眺めるような気持ちにさせてくれます。

しかし、その対岸だと思っていた場所は、実際は自分が立っている場所であることに気付かされるのです。

自分のことのように痛みを感じ、泣きそうになった次のページで笑わせられる。

こだまさんの文章には不思議な力があります。

夫婦生活での苦悩やそれを上回る愛情が描かれる

「夫のちんぽが入らない」は、卑猥なタイトルとは裏腹に、描かれるのは夫婦生活での苦悩やそれを上回る愛情です。

また、心が壊れるほど真剣に勤めた教師生活や、学級崩壊、不倫など、思いもよらない話の展開にドギマギとさせられます。

人間の心はひどく弱いものですが、順応したり克服したりする強さも併せ持つものです。

世の中にはこんなに悩みを抱えてでも生き抜いて、自分よりはるか先をひた走る人がいる。
そう思わせてくれるところに私は救われました。

以前、こだまさんの「ここは、おしまいの地」を読んだ時も同じ感想を抱いた気がします。

こだまさんの飾らない文章は心にすっと入ってきて、私の中に溶け込んでいくようです。

sutekinayokan.hatenablog.com

夫婦生活の苦悩は誰にでもある

夫婦生活での苦悩は誰にでもあります。

私も悩んでいることがありますが、今のところ解決策が見つかる気がしません。

こだまさんのようにそもそも“ちんぽが入らない”というのは深刻ですが、そうでなくてもセックスレスで悩む夫婦は多いと聞きます。

御多分に洩れず私もその1人……。
子供ができてからというもの、なかなか夫婦の時間を作るきっかけを作れずにいます。

好きな人に「好き」と伝えたり、繋がったりすることは、本当はとても簡単なことのはず。
しかし、それが普通にできなくなってしまうのは何故なのでしょう……?

簡単なことほど難しい。
でも、私の場合は妻を愛する気持ちは変わっていませんし、むしろ深まっています。

もし「子供と妻のどちらかを選べ」というトロッコ問題があったら、私は妻を選びます。
そして、妻が同じように「子供と夫のどちらかを選べ」と迫られた場合には、妻は子供を選んでくれるはず。

私はそのように思える今の夫婦関係を信頼しあえる2人だからこそできると感じており、そのためにも私は自力で生き残れるようになりたいし、夫婦がそれぞれできることを協力し合って生きていきたいと思います。

「夫のちんぽが入らない」を読んで、夫婦の絆や様々な愛の形について考えさせられました。

夫婦それぞれ色々な苦悩があって、「普通」なんてどこにもありません。

私の場合は、ただ「妻を愛している」ことだけが事実です。

文章を書くことで救われる

文章を書くことで、自分が普段言えないことや心の闇を打ち明けることができ、救われることがあります。
少なくとも、私は今までブログを書いて救われたことが沢山ありました。

この書評ブログ「ホンダナ!」とは別に、15年くらい前からブログを書いて心の闇を吐き出してきた経験のある私は、こだまさんの私小説にとても共感を覚えます。

“ちんぽが入らない”自分を責め続けたこだまさんも、きっと文章を書いて吐き出すことで、随分と救われたのではないでしょうか。

しかしながら匿名とはいえ、人には言えない悩みを書籍という形で出版し、ドラマ化までさせてしまう大胆さには驚かされます。

同時に、そうやって生計を立てている人がいるという事実に勇気付けられ、憧れるばかりです。

いつか私も自分の文章でお金を稼いでみたい……!

「将来は作家になりたい」と夢見ていた幼い頃の熱い想いがよみがえってきました。

このブログがそのきっかけになればいいなと思います。

まとめ

「夫のちんぽが入らない」は、卑猥なタイトルとは裏腹に、夫婦生活での苦悩やそれを上回る愛情をひたむきに描いた私小説です。

あまりにも正直な“愛と性”の告白は、雨のように心に染み渡ります。

まるで自分のことのように痛みを感じ、思わず泣きそうになりますが、その次のページで笑わせられる、なんとも異色の作品です。

また、人に言えない悩みを匿名とはいえ書籍化し、更にはドラマ化までさせてしまう大胆さに勇気付けられます。

自分を責めてしまう人、夫婦生活で悩んでいる人、仕事がうまくいかない人。
そんないろんな悩みを抱えている人にぜひ手に取って欲しいです。

この本を読むことで救われる人がいる。

そう確信できる1冊です。