三浦しをんさんと言えば直木賞作家として有名ですが、著書の中でも私がひときわ好きな作品があります。
それが「ロマンス小説の七日間」。
正統派ロマンス小説の雰囲気も味わえる一風変わった恋愛小説で、型破りな展開がとにかく笑えます!
それだけでなく、三浦しをんさんの親しみのある文章は「本を読んでいる」というより、まるで友人と会話を楽しんでいるかのよう。
1人で本を読んでいるはずなのに本との会話が止まらない新感覚のラブコメディ!
そんな和気藹々たる物語が楽しめる「ロマンス小説の七日間」のブックレビューをお届けします。
翻訳家が勝手に創作してしまうハチャメチャなストーリー!?
主人公のあかりはロマンス小説の翻訳家。
中世騎士ウォリックと女領主アリエノールの歯も浮くような恋愛小説の翻訳に奮闘しているところに、半同棲中の恋人の神名(かんな)が突然「仕事を辞めてきた」と言って帰宅します。
なんの相談もなく無職となった恋人を前に戸惑うあかりは、思わず自分のささくれ立つ気持ちをロマンス小説の中にぶつけてしまいます。
原作を離れ、あかりの手によってどんどん創作されていくストーリー。
現実と小説が互いに影響し合い、やがて物語はとんでもない結末に……!
あかりと神名、ウォリックとアリエノールの行く末は一体どうなってしまうのでしょうか?
直木賞作家の三浦しをんさんが贈るハチャメチャな新感覚ラブロマンス小説です!
ロマンス小説の雰囲気も味わえる!(最初は……!)
「ロマンス小説の七日間」はロマンス小説の翻訳パートとあかりが暮らす現代のパートが交互に描かれる「歴史物×恋愛小説」です。
物語の冒頭では、中世騎士ウォリックと女領主アリエノールの歯も浮くような恋物語が演じられ、普段読むことのない“英国中世騎士道ロマンス小説”の雰囲気を存分に味わえます。
そんな中、恋人の神名による「仕事辞めてきた」という爆弾発言をきっかけに繰り広げられるハチャメチャな展開が非常に面白いです。
この場でネタバレさせたくなるような展開に笑いを噛み殺しながら読み進めると、予想を超える結末へと繋がっていきます。
このエンターテイメント性の高さはさすがの一言。
笑いと意外性に満ちた新感覚の恋愛小説です!
全く新しい規格外のロマンス小説!
ロマンス小説と言えばハーレクインという主に英国で編集される専門レーベルが有名です。
そのハーレクインに代表される“王道”と呼ばれるロマンス小説は、大筋のストーリーが決まっています。
つまり、ゴージャスなヒーローと健気なヒロインが出会って恋に落ち、些細なことで喧嘩をし、悪役に翻弄されたりヒロインがさらわれたりと絶体絶命の窮地に立たされますが、それを見事に乗り越えて2人は末長く幸せに暮らすのでした。ハッピーエンド。こんな感じです。
1章を読むだけで結末が想像できる王道ロマンス小説に対して、「ロマンス小説の七日間」はあかりの暴走によってありえない展開を迎える規格外のロマンス小説!
王道のように先が見える安心感はなく、「一体この物語はどこに行き着くのだろう?」と不安になる感覚はまさに“一寸先は闇”ということわざが思い浮かびます。
要するに、同じ「ロマンス小説」でも正反対の作品なんですよね。
もはや全く別ジャンルのようではありますが、三浦しをんさん自身がロマンス小説の愛好家なので、ロマンス小説好きの方にもきっと共感できる部分が多いはず……!
王道とは全く違ったストーリー展開を楽しめるので、ロマンス小説愛好家の方にも是非読んで頂きたい作品です。
友人と会話をしているような親しみのある文章
「ロマンス小説の七日間」を読んでとても良かった点は、文章に親しみがあるところ。
これは「読みやすい」ともまた違った感覚で、まるで友人と会話を楽しんでいるかのような気楽さを覚えます。
そのため、全く堅苦しさを感じることはなく、普段読み慣れないロマンス小説のパートでも抵抗なくすいすいと読めてしまうほど!
この気楽さを「心地よい」と捉えるか「浅い」と捉えるかで物語の印象は180度変わりそうですが、私は“何も考えずに気楽に読める本が好き”なので大変楽しめました!
著書の中では直木賞を受賞した「まほろ駅前多田便利軒」が有名で私もお気に入りの作品ですが、あまり知られていない「ロマンス小説の七日間」こそ私の一押し作品です。
「まほろ駅前多田便利軒」が好きな方には、三浦しをんさんの2冊目に読む作品として特におすすめします!
まとめ
「ロマンス小説の七日間」は、翻訳家の主人公が私生活のささくれ立つ感情に振り回され、翻訳するロマンス小説をどんどん創作していってしまうハチャメチャなストーリーです。
この設定だけでも既に私のツボですが、三浦しをんさんの友人と会話をしているような親しみのある文章に臨場感があって面白さを倍増させています。
ジャンルとしては恋愛小説とも歴史小説とも言える内容ですが、恋愛物が好きな方も、歴史物が好きな方も等しく楽しめるはず……!
今から15年以上前に刊行された作品ですが、“気楽に読める笑える本”をお探しの方には一読の価値ありの作品です!