いとうせいこうの「想像ラジオ」は東日本大震災を背景にした「生と死」の物語

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先日、文喫の“選書”サービスを利用して「泣ける本」のリクエストをしてきました。

「想像ラジオ」はその時に紹介して頂いた本の中で、1番読んでみたいと感じた作品です。

やさしげなイラストに親しみを感じ、不思議なタイトルに惹かれました。

この作品は東日本大震災を背景にしており、非常に取り扱いが難しい題材を扱っていることも興味深く感じた要因のひとつ。

早速読んでみたところ、第一印象とは全く違った感想を抱きました。

正直に言うと「私には合わない」と感じてしまい、何を伝えたいのかわからない不思議な展開に思考停止寸前……。

あまりにも掴みどころがなかったので解説に目を通してみると、意外にもこの作品の奥深さが見えてきました。

深く読み解かないと理解ができない難しさがありますが、生者と死者の新しい関係を描いたメッセージ性の強い作品です。

今回は、いとうせいこうさんの「想像ラジオ」のブックレビューをお届けします。

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文喫の“選書サービス”を利用して「泣ける本」をリクエストしてみた!

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六本木に新しくできた話題のスポット“文喫”は「入場料を支払う」本屋です。

先日ようやく訪問することができ、とても居心地の良い空間に再訪を誓ったものですが、その際に「選書」のサービスがあることを知りました。

なんでも「リクエストした本を書店員さんが選んでくれる」サービスとのこと。

※私が利用した際は無料でしたが、より良いサービス作りのため2019年8月27日より1回1,000円の選書サービス料がかかるようになりましたのでご注意ください!

これは面白そうだということで、さっそく日頃から探している「泣ける本」をリクエストしてみました。

本のプロが選ぶ「泣ける本」は一体どんな作品なんだろうかとワクワクしながら訪問すると、紹介された本は全部で7冊。

普段自分が選ぶのとは全く違った視点で選書された作品は非常に興味深く、とても新鮮で面白い体験をすることができました!

今回は文喫の「選書サービス」の体験レビューをお届けします。

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七尾与史の「偶然屋」は軽くて過激なブラックユーモアミステリー!

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先日、五十嵐貴久さんの「1981年のスワンソング」を私に紹介してくれた読書家である会社の上司が「面白い作品を読んだ」と、また本を貸してくれました。

それが、七尾与史(ななおよし)さんの「偶然屋」。

「運命だと思っていた出来事は実はすべて仕組まれていたのかもしれない!?」と思わせるブラックユーモアに富んだミステリーです。

偶然を装って仕組まれた出来事に人々が洗脳され争いを始める姿が恐ろしく、かなりの問題作でもあるこの作品。

タイトルや装丁だけを見ると軽いテンポで語られるエンタメ小説かと思いきや、意外にも過激な内容で度肝を抜かれます。

気心の知れた上司からオススメされた本ですが、癖が強いので好き嫌いがはっきりと分かれるかも……!?

今回は、ブラックユーモアミステリーの名手・七尾与史さんが贈る予測不能の長編ミステリー「偶然屋」のブックレビューをお届けします。

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辻村深月が贈る映画ドラえもんの書き下ろし長編小説「のび太の月面探査記」

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今回紹介する本は辻村深月さんが脚本を手がけた映画ドラえもんの書き下ろし長編「のび太の月面探査記」です。

辻村深月さんといえばドラえもんを愛する作家として知られ、著書の「凍りのくじら」ではストーリーのいたるところにドラえもんのひみつ道具が登場しました。

「凍りのくじら」は私が今まで読んだ数多くの本の中で1番好きな作品です。

その為、本屋で辻村深月さんの新作を見つけ、しかもドラえもんの書き下ろし長編だなんて文字を見たときは思わず興奮してしまいました。

しかし、期待が高まり過ぎた状態で読み始めてすぐに「大人になってから読むドラえもんを素直に楽しめるだろうか」という不安がよぎります。

序盤、やはりアラフォーには「映画ドラえもん」は厳しいかと挫けそうになりましたが、中盤から終盤にかけてはいつの間にか物語にのめり込んでいきました。

「映画ドラえもん」を観ているかのような懐かしさを感じ童心に返った気持ちです。

また、ストーリーが意外と奥深く考えさせられた一面も……。

今回は、辻村深月さんの「のび太の月面探査記」のブックレビューをお届けします。

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思い切り泣いた心温まる命のドラマ!夏川草介の「新章・神様のカルテ」

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今回紹介するのは夏川草介さんが贈る医療ドラマのベストセラー「新章・神様のカルテ」です。

"新章"とタイトルに付いている通り、「神様のカルテ」というシリーズ作品なのですが、まず最初に私が声を大にして伝えたいことがあります。

それは、本作を読むためだけに「神様のカルテ」シリーズ全作を読む価値があるということです!

このシリーズを今まで読んできた感想を正直に言うと、文章に独特な癖があるため少し読みにくい印象がありました。

しかし、今作では筆者の文章力が格段に上がり読みやすくなっただけでなく、「こんなに泣いたのは久しぶり」というくらい感動して涙を堪えきれなかった程……!

そんな4年ぶりの5巻目となる本作は、前作まで長らく勤めた本庄病院から舞台が変わった新章となり、大学病院編がスタートしました。

大学病院という巨大な組織の中で挑む厳しい医療の現場と、家族や友人と穏やかに過ごす御嶽荘(おんたけそう)での暮らし。

涙なしには読み進めることのできない、心温まる命のドラマ「新章・神様のカルテ」のブックレビューをお届けします。

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三浦しをんのイチオシ作品!「ロマンス小説の七日間」は新感覚恋愛小説!

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三浦しをんさんと言えば直木賞作家として有名ですが、著書の中でも私がひときわ好きな作品があります。

それが「ロマンス小説の七日間」

正統派ロマンス小説の雰囲気も味わえる一風変わった恋愛小説で、型破りな展開がとにかく笑えます!

それだけでなく、三浦しをんさんの親しみのある文章は「本を読んでいる」というより、まるで友人と会話を楽しんでいるかのよう。

1人で本を読んでいるはずなのに本との会話が止まらない新感覚のラブコメディ!

そんな和気藹々たる物語が楽しめる「ロマンス小説の七日間」のブックレビューをお届けします。

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ホラーの鬼才・朱川湊人の「花まんま」は怖くて不思議な感動作!

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先日、朱川湊人さんの「本日、サービスデー」という短編集を読んだのですが、悪趣味なホラーが不気味で正直微妙でした。

文章がとても読みやすかったにも関わらず、内容や構成が今ひとつで本領発揮されていないように感じたため、逆に他の作品が気になり読んでみることに……!

そこで手に取ったのが直木賞を受賞した「花まんま」です。

「花まんま」は6編からなる短編集ですが、共通するのはやはりそのホラー性。

ホラーと聞くと読むのを少し躊躇ってしまいますが、不思議と怖さよりも温かさを感じる作風が心地よく非常に楽しく読めました。

中には思い切り怖い話があったり、切なさがあったり、笑えたりとバラエティーに富んでおり、どの話も佳品で一編の無駄もありません!

今回は、ホラーの鬼才・朱川湊人さんが贈る短編集「花まんま」のブックレビューをお届けします。

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六本木の新スポット!入場料を支払う本屋「文喫」に行ってきた!

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六本木に「入場料を支払う本屋ができた」と聞いて気になっていました。

その名も「文喫(ぶんきつ)」

漫画喫茶(通称“まんきつ”)の文芸書バージョンということでしょうか。

その気になる入場料ですが、なんと1,500円(税抜)とかなり強気!
単行本が買える価格じゃないですか……!?

これは本好きにとって「本屋に入る為に本より高いお金を払えますか!?」という挑戦状を叩きつけられたような気持ちになります。

一体どういう本屋なのでしょうか……? 非常に興味をそそられますね……!

ということで、さっそく仕事をサボって平日の昼間に行ってきたところ、思っていた以上に快適で食事も美味しく非常に居心地が良い素敵な本屋でした。

今回は入場料を支払う本屋「文喫」の訪問リポートをお届けします。

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村山由佳のデビュー作「天使の卵」は純愛小説の金字塔!

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今回は、村山由佳さんのデビュー作「天使の卵(エンジェルス・エッグ)」を紹介します。

私が初めて読んだのは高校1年生の夏。

「おいしいコーヒーのいれ方シリーズ」にどっぷりハマった私は当時出版されていた村山由佳さんの作品を全て読みあさりました。

そんな中、手に取った「天使の卵」を読んで、そのあまりの切なさに号泣したのを今でも覚えています。

しかし、今回15年ぶりくらいに読み直したところ、意外にも全く違った印象を受けました。 読む時期やタイミングによって感想が変わることも読書の楽しみのひとつですね。

出版されたのは1993年(平成5年)。
今から25年以上前の作品ですが、私の中で決して色褪せることはありません。

切なく狂おしい純愛小説「天使の卵」のブックレビューをお届けします。

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1000冊以上の本から選んだ感動して泣けるおすすめ小説12選!

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今回は、今まで読んだ沢山の本の中から、心に残っている“私が泣いた本”を紹介します。

大人になってから実生活で泣くことはほとんどありませんが、だからこそ「本を読んで泣きたい」という欲求があり、私は日々“泣ける本”を探しています。

登場人物に共感したり、辛い境遇に胸が締め付けられたり、感動的なセリフに出会えたり、小説を読んで泣くことで心が温かくなって癒されますよね。

しかし、泣ける本にはそう簡単に出会えません。
さらに、本は読む時期やコンディションによっても感じ方が変わることもしばしば。

もちろん人によって感想が全く異なることも……。

私は本に関しては比較的涙もろい方だと自覚しておりますが、それでも今までの1,000冊を超える読書生活の中で泣いた本は数える程しかありません。

随時追記していくつもりですが、今回は今まで私が読んだ本の中から「私が泣いた本」12冊のブックレビューをお届けします。

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朱川湊人の「本日、サービスデー」は正直イマイチでした……!

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今回紹介する朱川湊人(しゅかわみなと)さんの「本日、サービスデー」は、感想を先に述べてしまうと読後感が悪く私には合わない本でした。

その理由としては、短編集として作品同士の雰囲気のギャップが大きすぎるためです。

そのタイトルと装丁から読み口の軽い小説なのかと思いきや(表題作は実際にそうなのですが)、収録作品のホラー要素が強く、その怖さに驚かされました。

また、ただ怖いだけでなく悪趣味な内容となっており、はっきり言って他の作品との調和が全く取れていません。

テイストの異なる作品が収録され、作品ごとの雰囲気の違いをまとめて楽しめるのも短編集ならではの魅力です。

しかし、「本日、サービスデー」は悪い意味でテイストの差が激しく、結果として低評価となってしまいました。

文章自体は読みやすい短編集となっているだけに、非常に残念な作品でもありますね。
構成次第でもっと後味よくできたはずのような……。

今回は少し辛口レビューではありますが、直木賞作家である朱川湊人さんが贈る「本日サービスデー」のブックレビューをお届けします。

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ちょっと一休みして笑いたい時に!ナンシー関の「記憶スケッチアカデミー」

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今回は、今は亡き天才コラムニスト・ナンシー関さんの「記憶スケッチアカデミー」を紹介します。

“記憶スケッチ”とは提示されたお題を記憶のみに頼って描くこと。

「カエル」「パンダ」「カマキリ」などお題は一見簡単そうですが、「人間の記憶」の曖昧さが露呈され、そこにナンシー関さんの痛快なコメントが突き刺さり笑えます。

仕事に疲れた時、人間関係に悩んだ時……。
そんな気分が落ち込んだ時に是非手にとって頂きたい抱腹絶倒の作品です。

難しいことは何も考えずに笑いで解決!
「記憶スケッチアカデミー」のブックレビューをお届けします。

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