今回は、今は亡き天才コラムニスト・ナンシー関さんの「記憶スケッチアカデミー」を紹介します。
“記憶スケッチ”とは提示されたお題を記憶のみに頼って描くこと。
「カエル」「パンダ」「カマキリ」などお題は一見簡単そうですが、「人間の記憶」の曖昧さが露呈され、そこにナンシー関さんの痛快なコメントが突き刺さり笑えます。
仕事に疲れた時、人間関係に悩んだ時……。
そんな気分が落ち込んだ時に是非手にとって頂きたい抱腹絶倒の作品です。
難しいことは何も考えずに笑いで解決!
「記憶スケッチアカデミー」のブックレビューをお届けします。
悩みがどうでもよくなる虚脱感を与えてくれる作品
「記憶スケッチアカデミー」は、出されたお題に対して記憶だけを頼りに描いた作品を一般公募し、25,000通を超える応募の中から選ばれたキレのある作品をナンシー関さんがコメントして紹介する本です。
この企画自体は、1995年〜2002年に「通販生活」というカタログ雑誌に連載されていました。
ちなみにナンシー関さんを知らない方に簡単な説明すると、独特の観察眼でテレビ批評をする消しゴム版画家として名が知れた方で、どことなくマツコデラックスさんに似ています。
似ているのは巨体な外見だけでなく、物事の本質に鋭く切り込む物言いや、その的確な表現力も……!
百聞は一見に如かず。まずは「カマキリ」というお題で描かれたこちらのスケッチをご覧ください。
こんなに柔和なカマキリが今まで存在していたでしょうか。
なんか可愛いですよね。不思議と癒されます。
そして、ナンシー関さんの物事の特徴をよく捉え、的確に表現するコメントは、この短い文章の中でも健在です。
こんな可愛いカマキリを見て「プチッとつぶしたくなる」なんてなかなか思いつかない過激な表現ですが、言われてみればまさにその通り!
妙に説得力があって、そのコメントの的確さと表現力の精度には無駄がありません!
続けて「自転車」というお題のこちらもご覧ください。
こちらもナンシー関さんのコメントが的確で、読んでいると思わずニヤニヤ。
それぞれのスケッチから醸し出される空気感を見事にキャッチして、それに応じた臨機応変なコメントやツッコミにセンスを感じます。
投げやりに描かれた自転車から漂うもの悲しさからストーリーを見つけ出し「でも、そこをひとつ何とか」と哀愁のあるコメントで返す応用力。
「なにか足りないと思ったらカゴ忘れました」という気付きに対して「カゴはいいからペダルを描け」と盲点を突くツッコミの的確さ。
そのような1枚上手をいくコメントに溢れており、素人が書いたとぼけたスケッチにナンシー関さんの鋭いツッコミがちょうどいい塩梅で、何も考えずに読める気楽さに癒されます。
最後になんか笑えるのでパンダも見てください。
こちらもナンシー関さんの表現豊かなツッコミが「確かに!」と思わせ、簡潔かつ明確にぶった切る物言いが癖になります。
「腐ってた」のくだりはシュールで思わず笑いました。
この短いコメントにもストーリーがあることに驚かされます!
このように思わず吹き出してしまうスケッチ画にナンシー関さんの痛快なコメントが光る本。
それが「記憶スケッチアカデミー」です。
辛い時はこの本を手に取って笑い飛ばそう!
「記憶スケッチアカデミー」は辛い出来事があったり、機嫌が悪くなった時にこそ手にとって読みたい本です。
例えば、友人が入院することになった場合、この本はお土産に最適です。
この本に描かれるスケッチとコメントを見ていると、不安やイライラはいつの間にかバカバカしさに変わっていきます。
そのくらい笑うことって大切。
以前紹介したリリー・フランキーさんの「誰も知らない名言集」も似たところがありますね。
あの本も下ネタすぎて下ネタのこと以外考えられなくなるため、不安に駆られた時にオススメです。
お酒を飲んだりカラオケで歌ったりとストレスの解消法は色々ありますが、時間帯や場所を気にせずに1人でも可能なのが「本」を読むこと。
為になったり感動したりすることはありませんが、ただ笑えたり、脱力できるだけの本を知っているといつか役に立つ時がくるかもしれません。
私はそういう“バカバカしい本”も大好きで、読書の醍醐味の1つだと思います。
まとめ
「記憶スケッチアカデミー」は、素人が記憶だけを頼りに描いたスケッチ画にナンシー関さんの痛快なコメントが光る本。
悩みがどうでもよくなる虚脱感を与えてくれるため、辛い出来事があった時やイライラした時に最適です。
元気を出したい時に笑いで力を分けてくれる本が手元にあると心強いですよ。
悩みがどうでもよくなる、一休みした時に最適な1冊です!