六本木に「入場料を支払う本屋ができた」と聞いて気になっていました。
その名も「文喫(ぶんきつ)」。
漫画喫茶(通称“まんきつ”)の文芸書バージョンということでしょうか。
その気になる入場料ですが、なんと1,500円(税抜)とかなり強気!
単行本が買える価格じゃないですか……!?
これは本好きにとって「本屋に入る為に本より高いお金を払えますか!?」という挑戦状を叩きつけられたような気持ちになります。
一体どういう本屋なのでしょうか……? 非常に興味をそそられますね……!
ということで、さっそく仕事をサボって平日の昼間に行ってきたところ、思っていた以上に快適で食事も美味しく、非常に居心地が良い素敵な本屋でした。
今回は入場料を支払う本屋「文喫」の訪問リポートをお届けします。
文化を喫する、入場料のある本屋さん
文喫とは「文化を喫する」をテーマに掲げた入場料のある本屋さん。
本と人と、1対1で向き合える時間と環境を提供してくれる場です。
置かれる本は日本文学以外にも多岐にわたり、人文科学や自然科学、旅行、食、デザイン・アートに至るまで約3万冊の書籍を取り扱っています。
店内に置かれるすべての本は自由に読むことができ、もちろん本屋なので購入することも可能です。
そんな文喫の入場料は1,500円(税抜)。
(平日の19時〜23時は1,000円のNight Cruising Time!)
決して安くはないと感じますが、一体どのような仕組みになっているのでしょうか。
今回、本好きブロガーとして徹底的にリポートしていきます。
場所は六本木交差点のすぐ近く!
場所は地下鉄日比谷線及び大江戸線の六本木駅3番出口からすぐのところ。
六本木で38年間愛された本屋“青山ブックセンター六本木店”の跡地です。
営業時間は9:00〜23:00(L.O.は22:30)。
定休日は特になく、不定休となっています。
(2018年の年末年始は休まず営業していました)
1度入場すると滞在できる時間に制限はなく、開店から閉店まで滞在した場合は最大14時間も楽しむことが可能です。
無料エリアと有料エリアに分かれる
文喫は誰でも入れる無料エリアと、入場料を支払う有料エリアに分かれています。
企画が展示される「展示室」と約90種類もの雑誌が並べられる「エントランス」は無料で入れるエリア、そしてその先の階段から上が有料エリアです。
無料エリアは普通の本屋と同じように誰でも入れる為、ふらっと立ち寄って展示物を眺めることや、たくさんの種類がある雑誌を購入することもできます。
有料エリアに入りたい場合は、右手にあるカウンターで受付をしましょう。
無料で高速wifiが利用可能!
受付を済ませると番号が書かれたバッジを渡されるので、こちらを服の見えるところに身につけます。
番号札を裏返すとwifiのIDとPASSが書いてありますので、自分のデバイスに入力することで無料で使用することが可能です。
ちなみに私はパソコンを持っていたのでwifiを使わせて頂きましたが、自分のポケットwifiと比べると天と地の差を感じるほど高速回線で快適でした。
コーヒーと煎茶が飲み放題!
入場料を支払うと喫茶スペースが利用でき、京都で親しまれる小川珈琲のコーヒーと、宇治産の煎茶が飲み放題になります。
無料のお茶と言ったら如何にも価格の安い粗悪品が出てきそうなところですが、しっかりとこだわりがあるところは好感が持てますね。
途中退出は15分を目処に!
途中退出は15分を目処にすることが可能です。
受付で途中退出をしたい旨を申し出ると引換券を発行してくれます。
15分を目処にということなので、買い物に行ける訳でもなく、よほどのことがない限り途中退出する機会はなさそうです。
ロッカーを完備!
店の1番奥にロッカーがありますので、店内を移動する際に荷物をしまうことが可能です。
それほど重厚なロッカーではありませんが、座席に貴重品を置きっ放しにするより安心できますね。
ちなみに収納スペースは横幅30㎝、奥行き37㎝、高さ40㎝位ありました。
電源カフェとしても利用可能!
座席によっては机に1つずつ電源があるため、電源カフェとしても利用できます。
また、写真のように喫茶室の床の至る所に金属の蓋があり、開けてみるとコンセントが出現!
初めて来る人は気付けないステルス性……(笑)。
電源が必要な方はこの金属の蓋の付近に座るといいですよ。
平日のお昼はゆったりとした雰囲気
混雑具合は平日の昼間だったこともあると思いますがゆったりとした雰囲気。
私が10時頃に入店した際は9番の名札でしたが、ちょくちょく確認してみたところ、13時で42番、14時で52番、15時で74番、16時で85番が配られていました。
15時頃になると「少し混雑してきたな」と感じる程度です。
私は16時過ぎに帰ったのでその後の様子はわかりませんが、帰る人もいるので最後まで窮屈さを感じることはなく過ごせました。
土日は混雑して入場規制がかかることも……!
平日はゆったりとしていますが土日はかなり混雑するようで、お昼前後になると入場規制がかかることも!
逆に言えば混雑状況に応じて入場が制限されるので、店内で窮屈な思いをすることはありません。
ちなみに「文喫」のツイッターアカウントを見ると混雑状況がわかるようになっています。
ただいま店内満席につき、入場規制を行っております。
— 文喫 六本木 (@bunkitsu_rpng) 2019年1月26日
1Fフロアでお待ちいただけるお客様にのみ、整理券をお渡ししております。
入場規制が解除になりましたら、お知らせいたします。
希望に合わせた本をスタッフが選書してくれる!
文喫では、テーマやジャンル、また本の好みなどの希望に合わせてスタッフが本を選んでくれる「選書」サービスがあります。
スタッフに選書をお願いしたい場合は来店の3日前までに電話(03-6436-9120)もしくは受付で依頼をすればOKです。
ちなみに選書のサービス料は1,000円(税抜)。
どんな本を読んだらいいのかわからない方だけでなく、普段から本を読まれる読書好きの方でも、選書を本のプロにお任せするのは面白そうですね!
自分が選ぶのとはまた違った視点で本に出会うことができそうです。
選んでもらった本はその場で読むことができ、もちろん気に入らなければ購入しなくても全く問題ありません。
これぞ文喫のもっとも有効的な使い方かもしれません!
オリジナルギフトボックスで本のプレゼント!
「文喫」で買った本はオリジナルギフトボックス(500円)に入れてラッピングすることができます。
普通の本屋にはない本が置いてありますので、本のプレゼントを探しに行く際に重宝しそう!
また、目当ての本のジャンルをあらかじめスタッフに選書してもらい、実際に自分の目で見て買うことができるのは非常にメリットがありますね。
本のプレゼントを探したい際には「選書」のサービスと合わせて活用することをオススメします。
本と出会うための本屋
文喫は本と出会うための本屋です。
私たちは本を買うとき、ネットで注文したり、電子書籍で配信することが当たり前の時代になりました。
そのため、実際に書店に足を運んで面白そうな本はないかと選んだり、その過程で思ってもみなかった本に出会ったりという機会が特別なことのように感じます。
文喫は、本と向き合える時間と場所を提供してくれる本屋です。
その空間は大きく分けて5つのエリアに分かれています。
「選書室」は本との素敵な出会いをもたらす空間
選書室は本棚が所狭しと並んでおり普通の本屋と変わりません……と思いきや、結構変わっています。
というのも、最新の本や売れ筋の本が置いてある訳ではないのです。
置いてある作家はバラバラですが、テーマごとに選書されており統一感を出しています。
例えば、「食」というテーマの棚の1つではお酒について扱われており、ウイスキーやビールの本が並びます。
ワインの棚も充実しており、お酒の本でここまで品揃えがあるのは珍しいです。
他にもカレー好きには堪らない「カレーの本を集めた棚」もありました!
選書の着眼点が面白いですね。
また、こちらは「日本文学」というテーマの棚の1つですが、文庫本と単行本が混在しており、出版社もバラバラ。
これは、普通の本屋の並びではありません。
東直子さんの「とりつくしま」の隣に樋口一葉さんの「小説集」が置いてあったりと、どのような意図で選書されたのか気になります。
自分の好きな本の隣にある見知らぬ本は、つい興味が湧いてくるもの……!
このように、敢えて寄り道ができるような本の置かれ方がされているところが、文喫の選書室の特徴です。
斬新な選書だったのでハミングバード・ブックシェルフを運営している鷗来堂さんが絡んでいるのかと思いましたが、運営は「リブロ」や「蔦屋書店」を経営している株式会社リブロプラスさんでした。
ちなみに文喫の選書はスタッフさんがしているそうです。
文喫のスタッフさんは、いわば本のコンシェルジュのようですね。
「閲覧室」で本と向き合う時間に没頭!
じっくりと本を吟味できる机と椅子12席がずらっと並ぶ「閲覧室」では、何冊も携えて本と向き合う時間に没頭することができます。
ちなみにこのリクライニングチェアは人気があるようで、お昼過ぎにはほとんどが埋まっていました。
この座席を利用したい場合は平日でもお昼前に入店した方が良さそうですね。
「研究室」は読書会にもってこいのコワーキングスペース
ガラス戸で仕切られた研究室は仲間と本について談笑したり、打ち合わせをしたりと、あらゆる場面で利用できます。
店内はどこも静かなため会話を愉しむことには向いていませんが、「研究室」はガラス戸で仕切れているため、唯一店内で喋りやすい空間となっています。
部屋には電源があり、飲食も可能です。
中に入ると4人掛けの机が2つあり、1人でもグループでも自由に利用できます。
1人でここを陣取るのはなかなか勇気がいりそうですが、私が1人で座っていたらどなたか話しかけてくれるでしょうか……?(笑)
いつかここで読書会をしてみたいです。
「展示室」は無料エリアなのでどなたでも閲覧可能です!
展示室は入口を入ってすぐの無料エリアの為、どなたでも閲覧可能です。
本にまつわる企画展示を定期的に行なっています。
私が訪問した際は「雑誌の力展」を開催していました。
今回のテーマはあまり興味のある内容ではなかったのですが、今後どのような展示が行われていくのか要チェックです!
好きな作家の個展をやってくれたら面白そうですね。
「喫茶室」でのんびりカフェ気分!
本との出会いだけでなく、食事と会話を愉しめる「喫茶室」は有料スペースの右奥にあります。
「喫茶室」の入口のカウンターで無料のコーヒーや煎茶を注文することができ、その他にも食事やデザート、またアルコールなども購入可能です。
様々なタイプの座席があるので、お気に入りの場所を見つけましょう!
ちなみに、カウンターの後ろに席札がありますので、席を押さえる際に便利です。
「喫茶室」では会話を愉しむことができますが、本を読んでいても気にならないようにお客さん同士が気を使っている印象を受けます。
そのため、普通の喫茶店のような騒音はなく、本を読むのに適した環境です。
「喫茶室」で好きな座席を見つけて本と向き合おう!
本を読むスペースでもある「喫茶室」は様々なタイプの椅子やソファーが用意されています。
北欧風の家具やスツールがおしゃれで本好きのカップルならデートにもいい感じです。
その他にもソファ席やクッションスペースもあり、自宅で本を読むようなリラックスできる空間も用意されています。
どの席もちょうど良い明るさで静かなので、オシャレな図書館といった雰囲気!
ちなみにこのクッションスペースはオブジェではなく実際に座っても良いとのこと……!
靴を脱いでゴロゴロと本を読んでいたら眠くなってしまうかもしれませんね。
1箇所だけボックス席もありますので、グループで食事をしながら本を読むなんてことも可能です。
自分の好きな場所を見つけて本と向き合う時間を楽しみましょう!
喫茶室では食事やアルコールも楽しめる!
喫茶室には座席が70席ほどあり、食事やアルコールも楽しめます。
空間が広く食事をしている人の割合が少ないからか、匂いはあまり気になりません。
今回、せっかくお昼時に来たのでランチを食べていくことにしました。
メニューはこちら!
食事メニューやアルコールは11時半以降から注文が可能とのこと。
ちょうど11時半を過ぎたところだったので、メニューを見てみることに!
「 フードメニュー」
「ドリンクメニュー」
「喫茶室」のメニューは食事4種、軽食3種、デザート4種と多くはありませんが、「牛ほほ肉のハヤシライス」や「海老ドリア オマール海老のソース」など料理名がどれも美味しそうで食欲をそそられます!
イベント価格だと注文する気が失せますが、食事の価格は1,000円前後とそれほど高くはなく、抵抗感のある価格設定ではありません。
場所が六本木ということを考えると意外とリーズナブルかもしれません。
牛ほほ肉のハヤシライスを注文!
今回はお店の看板メニューでもある「牛ほほ肉のハヤシライス」を注文しました。
メニューの中では1番高い1,080円(税抜)です。
配膳スタイルは一見「給食」のようですが、驚いたのがその美味しさ!
どうせレトルトが出てくるのだろうと思っていたら、予想外の本格的なハヤシライスが登場しました!
漫画喫茶の軽食をイメージしていたらえらい差がありますよ。
これがとても本屋とは思えないほど美味しいハヤシライスでした。
コクのある濃厚なハヤシソースは、牛肉の旨味と玉ねぎの甘みを存分に感じることができます。
中にはごろっとした大きな牛ほほ肉が2つ入っていて、スプーンで持ち上げるだけでもほろほろと崩れ落ちそうなほど……!
ルーとは別に仕込まれた玉ねぎは食感が良く甘みもあって、いい感じのアクセントになっています。
調理している人がいるとは思えない狭そうなキッチンですが、レトルトの味を遥かに凌駕していて、ホテルのレストランで出てきてもおかしくないと思えるくらい美味しかったです。
あまりに美味しかったのでお店の人に聞いてみたところ、オリジナルのものをお店で調理しているとのこと。
本屋と思ってなかなか侮れません! ちょっとナメてました。
ということで、文喫に来た際は食事をされることを猛烈におすすめします!
まとめ
今回ずっと気になっていた「文喫」にようやく訪問することができました。
行く前は「入場料を支払う得体のしれない本屋」という印象でしたが、実際に行ってみると本と存分に向き合うことができるだけでなく、料理も美味しい素敵な空間が広がっていました。
六本木に行く機会はあまりありませんが、「また行きたい!」と思わせる居心地の良さがあります。
入場料1,500円は高く感じるかもしれませんが、本が好きな方は行く価値がありますよ。
また、文喫には“選書”という書店員さんがリクエストに応じて本を選んでくれるサービスがあり、普段自分が選ぶのとは全く違った視点で選ばれる作品は非常に興味深く、とても新鮮で面白い体験をすることができます!**
こちらの体験レビュー記事も是非ご覧ください!
いい本に出会えそうな素敵な予感に溢れています!