成田名璃子の「グランドスカイ」はスキージャンプの崖っぷち青春グラフィティ!

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この本のPOINT!

「スキージャンプ」という題材の珍しさが興味をそそる!

仲間と共に成長するスポーツの素晴らしさに感動!

“日の丸飛行隊”の金メダリスト船木和喜さんも絶賛の青春グラフィティ!

今回紹介する作品は、成田名璃子さんの青春小説「グランドスカイ」です。

この作品の題材は、スポーツ小説としては珍しいスキージャンプのクラブチーム。

スキージャンプといえば、オリンピックの中継では観たことがあるけれど、日常生活では全く馴染みのないマイナースポーツのひとつです。

詳しいルールや競技の背景はあまり知られていませんが、大空を鳥のように飛ぶ姿はインパクト抜群!

そんな開放感あふれるスキージャンプの臨場感がダイレクトに味わえます。

長野オリンピック金メダリスト船木和喜さんも絶賛の、崖っぷちメダル争奪戦の青春ドラマ!

今回は、成田名璃子さんの「グランドスカイ」のブックレビューをお届けします。

解散の危機を乗り越えろ!崖っぷち青春ジャンプ!

不登校の松前至(まつまえいたる)は、ある日父親に無理やり連れて来られたスキージャンプの練習風景に魅了され、群馬の片田舎にあるクラブチームに入門します。

それ以来、大空を鳥のように飛翔するスキージャンプの虜になりましたが、クラブの中でもチームメイトと打ち解けることはありませんでした。

そんな中、実績のない弱小クラブチームへの市からの補助金打ち切りが決まり、突如運営停止の危機が迫ります。

存続するために出された条件は、今季行われる公式戦でメダルを3つ以上獲得すること。

その危機を救うために突然現れた元オリンピック選手である新コーチは、メダル獲得を担う弱小クラブの代表を選抜します。

センスはあるが恋愛で結果が左右される横沢翔子(よこざわしょうこ)。
親友に勝つために徹底した理論で飛ぼうとする岩倉航一(いわくらこういち)。
そして、自分が楽しく飛ぶことにしか興味がない松前至。

そんな癖だらけの選抜チームで崖っぷちのメダル争奪戦に挑む、スポコン青春物語です!

仲間と共に成長していくスポーツの良さが描かれる!

「グランドスカイ」の舞台は、スキージャンプの弱小クラブチーム。

ご存知の通りスキージャンプは個人競技ですが、描かれるのはあくまでチーム戦です。

選抜チームの中でメダルを懸けて必死に足掻く選手だけでなく、それを支えるチームメイトの陰ながらの努力も描かれます。

私は成田名璃子さんの著書では圧倒的に「東京すみっこごはん」シリーズが好きなのですが、それに匹敵するくらい今作にも感銘を受けました。

sutekinayokan.hatenablog.com

スポーツを通じて仲間と共に成長していく姿を目の当たりにして、思わず涙がこぼれます。

物語がわかりやすく、スポーツの良さ、青春の素晴らしさがストレートに伝わってくる作品です。

リアリティのあるスキージャンプの描写に感動!

この作品は、普段なかなか知り得ないスキージャンプの練習風景や飛翔中の描写が詳細に描かれており、非常にリアリティがあります。

スキージャンプでは追い風が不利で、向かい風が有利に働くなんて初めて知りました!

山の中で行われるこの競技は、目まぐるしく変わる環境の中で公平性を保つため、その都度条件を変えながら採点されます。

たとえば、風向きによってスターティングバーの位置を上下にずらしたり、点数の加減が行われるなど知らないことばかり……!

しっかりと取材をして作られたことが伺え、それが作品の説得力へと繋がっています。

作品にリアリティがあるからこそ、なかなか飛ぼうとしない癖だらけの選抜メンバーに向かって、思わず「飛べ!」と叫びたくなってしまうんですよね。

臨場感のあるスキージャンプの描写に感動します!

「日の丸飛行隊」の金メダリスト船木和喜のお墨付き!

「グランドスカイ」の注目すべき点は、やはり帯に書かれている長野オリンピック金メダリストの船木和喜さんのコメントです。

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スキージャンプの金メダリストが「これはおもしろい!!」と言っているんですから、そりゃ面白いに決まっています!

本の帯としてはこの上ないキャッチコピーですよね。
編集者さんの素晴らしい采配に拍手喝采を贈りたいです!

ところで、「グランドスカイ」を出版しているメディアワークス文庫は、「ずっと面白い小説を読み続けたい大人たちへ」というスローガンを掲げています。

先日書評を書いた「ちょっと今から人生変えてくる」も同出版社の作品です。

sutekinayokan.hatenablog.com

読みやすい作品が多く刊行されているのは、ライトノベルをメインに出版していた「電撃文庫」を読む世代が、社会に出る年齢になってきたことを受けて創設された一般文芸のレーベルだからこそ。

船木さんのコメントにもあるように、気兼ねなく「おもしろい!」と言える作品を生み出している出版社さんです!

まとめ

「グランドスカイ」は、スキージャンプという珍しいスポーツを題材にした青春小説です。

少年・少女たちが絶体絶命のピンチを乗り越え、仲間と共に成長していく姿が描かれます。

スキージャンプは“個人競技”(団体戦もありますが飛ぶのは個人)ですが、この作品では一貫して“チーム競技”として描かれており、その一体感が醍醐味です!

スポーツの良さ、青春の素晴らしさに気付かされ、思わず涙がこぼれます。

スキージャンプ金メダリスト船木和喜さんも絶賛の、崖っぷち青春物語です!