100万部超えのベストセラー待望の続編!辻村深月の「ツナグ 想い人の心得」

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この本のPOINT!

期待を裏切らない100万部超えのベストセラー待望の続編!

涙なしでは読み進められない!心に火が灯る感動作!

人を想う気持ちが温かい!記憶に残る救いの物語!

先日、何気なく本屋を覗いてみると、辻村深月さんの「ツナグ」の続編が並んでいて思わず声をあげて興奮してしまいました!

2019年は辻村深月さんのデビュー15周年を記念して、各出版社から続々と特別愛蔵版や新刊が刊行されています。

その中でも「ツナグ」は映画化もされたヒット作で、私も大好きな作品です!

100万部超えのベストセラーとなった前作を、本や映画で楽しんだ方も多いのではないでしょうか。

続編となる今作を早速読んでみると、心に火が灯るような温かいストーリーに胸を打たれ、涙なしには読み進めることができません!

今回は、辻村深月さんの「ツナグ 想い人の心得」のブックレビューをお届けします。
(※続編の書評のため前作のネタバレを若干含みます)

死者に1度だけ会えるとしたら、あなたは誰に会いますか?

一生の間に1度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。

最愛の祖母からその役目を引き継いだ当時高校生だった歩美(あゆみ)は、7年経った今では会社員として働きながらその務めを果たしていました。

顔も知らない父親に、事故死した幼い娘に、片思いしていたあの人に……ツナグの仲介のもと再会を果たす生者と死者。

その一夜限りの再会は、住む世界を分かつ者たちに一体何をもたらすのでしょうか。

誰にも言えない想いを胸に秘めて、ツナグの元に今日も依頼が舞い込みます。

心の隅々に染み入る感動の連作長編小説です。

少し大人になった歩美が紡ぐ、心に残る救いの物語

この作品は「ツナグ」の続編ですが、第1章「プロポーズの心得」に登場するのは前作「親友の心得」で登場した嵐美沙(あらしみさ)です。

前作を読んだことがある方ならば「親友の心得」がどれほど印象的な話だったか覚えているはず!

私は他の章のストーリーはうろ覚えですが、この話だけはずっと記憶に残り続けており、今回続編を読み始めてすぐにスピンオフに気付きました。

単に感動的で泣ける連作小説ではなく、辛く胸に突き刺さる1編が何気なく忍ばせてあるのは辻村作品ならでは……!

辻村さんの作品は“光と陰”が共存しているかのような双極な心理描写が特徴です。

忘れられない「親友の心得」のその後……!

前作の「親友の心得」では、感動させて泣かせにくるのかと思いきや、地の底に叩きつけられる衝撃の展開に随分と驚かされました。

とにかく、あの終わり方は凄かった……! 

感動の連作小説の中で、ひときわ際立って物語全体を引き締めていました。

そんな「親友の心得」の続編にあたる「プロポーズの心得」は、非常に感慨深い内容です。
私は物語に救いを感じ、胸に強く刺さりました。

辻村さんも前作でどん底に叩きつけたことを気にして続編を書いてくれたのかなぁ。

少し大人になった歩美とも再会することができ、嬉しい限りでした。

会いたくても会えない人がいる……!

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「ツナグ」は一生に1度だけ死者に会わせてくれる仲介人です。

生者も死者もたった1人、1度きりしか会うチャンスはありません。

私は友人や同僚を5人亡くしているのですが、会えるものならまた会いたいです。
しかし、その誰とも会う勇気も資格もないと思ってしまいます。

ツナグの仲介で会えるのは、人生で1度きりのチャンスです。
恋人や両親やその他大勢の誰かと会える機会を、私が会うことで奪ってしまう。

そう考えると、私から「会いたい」とは、なかなか言うことができません。

死者に会う勇気と資格

以前勤めていた会社の同僚は、同期入社ということもあり、自然と打ち解けて親しくなった友人のひとりです。

いつの間にか彼の恋人とも仲良くなり、休日に集まって飲みに行ったり温泉旅行に行ったりと、一緒に出掛けることもしばしば。

ある時期、2ヶ月の間に友人が2人自殺したことで、私自身も体調をひどく崩してしまい入院したことがありました。

38度以上の高熱が1ヶ月間くらい続き、病院で精密検査を受けることに……。

2週間ほどで無事に退院したのですが、友人とその恋人が快気祝いに自宅でたこ焼きパーティーを企画してくれました。

しかし、前日に私の都合がつかなくなり延期となったことで、2人は予定を変更してバイクで日帰り温泉旅行に出かけます。

そこで違法に追い越しをしてきた車と正面衝突する事故が起きてしまい、友人は帰らぬ人になりました。

重症を負いつつも一命を取り止めた恋人から聞いた彼の最後の言葉は「道を間違えた」だったそうです。

もし、私が入院していなければ?
もし、私が約束を断っていなければ?
もし、友人が道を間違わなければ?

事故は起きなかったのでしょうか。

全て結果論ですが、後悔は消えず、忘れることもできません。

もしツナグに会うことができたとしても、私は彼に会いたいと言えるでしょうか。
他の人を差し置いて、私が会っていいのかわかりません。

しかし、もし私が彼の両親や恋人、友人たちより長生きすることができたなら、その時はツナグに頼んで会いに行きたいです。

話すことがありすぎて、驚かせることもたくさんあるだろうけど。

いつかそんな日が来れば、笑って話せる気がします。

まとめ

「ツナグ 想い人の心得」は、人を想う気持ちが温かい、涙なしでは読み進められない感動作です。

そのテーマ故に、昔友人を亡くしたことを思い出しましたが、救いのある物語を読み終えた時に、とても穏やかな気持ちになりました。

本を読んで登場人物が救われていくことで、私自身も癒されてきたのだと実感します。

今まで友人が立て続けに亡くなったことで泣きすぎて、私の涙は一度枯れ果てました。

「もう何が起きても泣くことはないのではないか」と感じていた時期もありましたが、本のおかげで私は涙を取り戻しています。

本がもたらしてくれる心に火が灯るような温かさを、いつまでも忘れることはありません。