恩田陸の「蜜蜂と遠雷」は音楽の神様に愛されたピアニストたちの青春小説!

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2016年に直木賞本屋大賞をダブル受賞した恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」。

2019年には映画化もされ更に話題となりましたが、タイミングを逃してしまい今まで読まずにおりました。

「今更どうかな……?」と思いつつ読んでみたところ、なるほど、これは面白い!
もっと早く読めばよかったと後悔しました……!

内容はクラシックピアノの青春劇ですが、ピアノを弾けなくても物語にどんどん引き込まれていきます。

今年私が読んだ本の中でもひときわ印象深い作品でした!

今回は、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」のブックレビューをお届けします。

音楽の神様に愛されたピアニストたちの熱き戦い!

世界中に様々なピアノコンクールが乱立され飽和状態にある昨今。

中でも、芳ヶ江(よしがえ)国際ピアノコンクールは特別で、その覇者は音楽界の寵児(ちょうじ)となり、世界中から注目を集めます。

かつて天才少女としてデビューしながらも突然の母の死以来、ピアノが弾けなくなった英伝亜夜(えいでんあや)は、恩師の勧めを断りきれずに芳ヶ江国際ピアノコンクールへ出場することに……。

そこで出会ったのは、自宅に楽器を持たない少年・風間塵(かざまじん)の、人々を圧倒する神がかり的な演奏でした。

音楽の神様がもたらす運命の出会いはそれだけに留まりません。

楽器店に務めるサラリーマン・高島明石(たかしまあかし)や、完璧な技術と音楽性を併せ持つ優勝候補であるマサル・カルロス・レヴィ・アナトール。

それぞれのコンテスタントが紡ぐ音楽は色彩を帯び、お互いを高め合いながらコンクールは熾烈を極めます。

競争いう名の自分との戦いの中、天才たちが繰り広げるコンクールの結末は……!?

ピアノを弾けないのに、驚くほど引き込まれる!?

「蜜蜂と遠雷」はピアノコンクールの青春小説です。

私はピアノを弾けませんが、驚くほど物語に引き込まれました。

かなりの長編小説なので、途中で間延びする場面もありましたが、演奏シーンでは音が目で視えるかのような表現に胸が踊ります。

正直なところ、私は恩田さんの作品が少し苦手で、今まであまり読んできませんでした。

というのも、恩田さんの作品はあっさりしているというか掴み所がないというか、物語をしっかりと終わらせずに完結させるところがあるんですよね。

その理解できない点に「好きな人は好きなんだろうな」という壁がありました。

しかし、「蜜蜂と遠雷」は、登場人物の心の機微やドラマチックなフィナーレが読者として望んだ通りに展開されていき、これは良い意味で大衆的で誰もが楽しめる作品です。

物語に登場する曲は有名なものが多く選ばれており、メロディが思い浮かぶ点も読みやすい要因のひとつ。

ショパンの「バラード第1番」のように、好きな曲が出てくるだけでも嬉しくなりますね。

私は物語に好きなお酒が登場すると興奮しますが、同じように知っている曲が沢山出てきて読み応えがありました!

「蜜蜂と遠雷」に登場する楽曲を集めたCDアルバムもありますので、本を読んで興味を持った方はぜひこちらもチェックしてみてください!

ピアノコンクール経験者には逆に不満が残るかも……!?

「蜜蜂と遠雷」はクラシックピアノを題材にしてはいるものの、内容はかなり大衆的です。

そのため、ピアノコンクールを実際に経験している方は違和感を感じるかもしれません。

私が学生時代に所属していた合唱部では「Nコン全国優勝」を目指して活動していましたが、都大会で銀賞に終わった際の落胆は今でも忘れられないほどでした。

血の滲むような努力の果てにたどり着いたコンクールの舞台で抱く覚悟や熱望を、「天才」という一言で片付けらてしまうと少し軽薄な感じがします。

そのため、本気で音楽に取り組んでいる方にしてみると、薄っぺらい物語に感じるかもしれません。

私のようにピアノに対してニワカな知識しか持っていない方が素直に楽しめる、大衆娯楽的な作品です。

Amazonのレビューでは酷評も……!?

直木賞と本屋大賞をダブル受賞した「蜜蜂と遠雷」ですが、やはり全ての人に受け入れられている訳ではありません。

Amazonのレビューを覗いてみると、酷評されているコメントも見られます。

集約すると「蜜蜂と遠雷」は人気漫画のパクリ小説だという批判が目立ちました。

具体的にいうと「ピアノの森」や「四月は君の嘘」などの漫画に、ストーリーやキャラクターが似ているというのです。

確かに、私はこの作品を読んだ際に「四月は君の嘘」が思い浮かびました。
キャラクターの境遇や演奏する曲も似ています。

しかし私は全く嫌悪感を抱くことはなく、逆に相乗効果を感じて漫画を読み直したほどです。

改めて「四月は君の嘘」はいい漫画だなと感じましたし、「蜜蜂と遠雷」もより好きになりました。

本を読んで感じることは人それぞれ。

自分の好きな本が酷評されていると何気に傷つきますが、好きなものは好きでよしとしています。

「祝祭と予感」は和みながら読めるアフターサイドストーリー!

「蜜蜂と遠雷」にはその後を描いたスピンオフ小説である「祝祭と予感」があり、合わせて読むことで物語の世界観をより楽しむことができます。

この作品は映画化を記念して、映画公開当日の2019年10月4日に刊行されました。

英伝亜夜を支えた友人の奏(かなで)がビオラを購入するエピソードや、2次予選の課題曲となった「春と修羅」が産まれた秘話などが収録されています。

このスピンオフ小説ですが、「蜜蜂と遠雷」の雰囲気を軽くした談話となっており、食後にコーヒーを楽しんでいるような心地良さが魅力的……!

コンクールのピリピリとした雰囲気も味わい深いですが、和みながら読めるアフターサイドストーリーもなかなか良いものです!

あっという間に読み終わってしまいました!

まとめ

「蜜蜂と遠雷」は、ピアノコンクールを題材にした大衆的な青春小説です。

コンクールを中心に物語が進みますが、特別な知識は必要なく、ピアノを知らない方でも楽しめます。

私はピアノを弾けませんが、そんなことは関係なく物語に引き込まれました!

物語に登場する楽曲は、曲名を聞いてピンと来なくても、耳にすれば一度は聞いたことがあるような有名な曲が多く選ばれています。

本を読んだ後に実際の曲がどんなものか聴いてみるのも楽しいですよ。
きっと「この曲だったのか!?」という発見があるはず……!

私は最近クラシックピアノブームになってしまい、YouTubeでもよく聴くようになりました。

「蜜蜂と遠雷」は、今年読んだ本の中でもひときわ印象に残った作品です。