「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」は、2021年に本屋大賞を受賞した「52ヘルツのクジラたち」の著者である町田そのこさんのデビュー作!
出版社は文庫本に唯一スピン(紐状のしおり)が付いている新潮文庫です。
版元が新潮社というだけで、なんとなく安心してしまうのは私だけでしょうか……?
そんなこの本には、大胆な仕掛けを選考委員(三浦しをんさん・辻村深月さん)に絶賛され、R-18文学賞大賞を受賞した「カメルーンの青い魚」を含む5編の連作短編が収録されています。
静寂の中ほとばしる人々の強さをしなやかに描き出した力のある短編集です。
「52ヘルツのクジラたち」がお好きな方でしたら間違いなくオススメ!
今回は「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」のブックレビューをお届けします。
あらすじ
山に囲まれたすり鉢状の小さな街で営まれる人々の生活。
そこで描かれるのは、弱者が抱く未来への希望と自由への渇望。
思いがけないきっかけでよみがえった一生に一度の恋や、ともには生きられなかったあの人のこと。
理不尽に耐え懸命に成長していく少年少女たちの願いとは……。
人と人が繋がり、助け合い、どんな場所でも生きると決めた強さを描いた5編の連作短編集です。
人と人とのつながりを感じられる連作短編集!
「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」はそれぞれ独立した短編小説ですが、登場人物や場所がリンクしながら繋がっていく連作小説です。
その繋がりが物語のテーマ(未来への希望と、自由への渇望)とも合致しており、読むごとに拡がりをみせていきます。
物語の雰囲気は全体を通じて静寂ですが、人生の核心をつく仕掛けが散りばめられており、私の胸に幾度も刺さりました。
是非読んで欲しいのでネタバレは防ぎますが、いたるところに魚や海を連想させるキーワードが登場し、登場人物の状況と対比していきます。
そのキーワードが物語に奥行きを作り繋がっていくことで、人が生きていく上での強さや優しさ、そして救いを感じるのです。
じんわりと感動する物語を読むのは久しぶりで、これぞ読書の醍醐味のひとつだなと感慨深くなりました。
とてもいい本……! 大変オススメです!
「波間に浮かぶイエロー」がとにかく秀逸!
一冊を通じてどれも面白かったですが、私は特に3編目の「波間に浮かぶイエロー」が好きです。
この章では、最近おなじみになりつつあるドラァグクイーンが登場するのですが、「またか……」と思わせない非常に良くできたからくりが感動を呼びます。
人が生きていく上で、自分の力ではどうにもできない理不尽や困難な出来事は避けられません。
産まれてくる国や場所は選べず、容姿や性別も選べず、親の裕福さや境遇も選べません。
そんな中、いつ事故や病気に襲われるかもわからず、生と死の狭間で人は生きていきます。
しかし、どんな状況に置かれてもそれでも生きていくと決めた人々は強く、その強さに救われる人がいる……。
「波間に浮かぶイエロー」は、人が生きていく中で、思いがけず見つけた優しさと強さを教えてくれる作品です。
変化することを恐れる必要はなく、変わらない想いも世の中にはあることを気付かせてくれます。
まとめ
「夜空に及ぶチョコレートグラミー」は、どんな場所でも生きると決めた人々の強さとしなやかさを描き出す5編の連作短編集です。
ここ最近読んだ本の中でも群を抜いて良い本でした。
連作短編集としての構成力が素晴らしく、一冊を通じてこの本が持つテーマやメッセージがストレートに伝わってくる作品です。
町田そのこさんの他の作品も読みたくなりますね。
私が個人的に毎年行なっている今年読んだ本ベスト!の上位にノミネートすること間違いありません!
未読の方は読んだ方がいいですよ!
オススメです!