相沢沙呼(あいざわさこ)さんの「medium 霊媒探偵城塚翡翠(メディウム れいばいたんていじょうづかひすい)」を、皆さんはもう読みましたか!?
この作品は「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」「2019年ベストブック」で、それぞれ第1位に輝き見事に3冠を達成!
その勢いは止まることを知らず、先日発表された「本屋大賞」の候補10作品にもノミネートされました!
これだけ多くの賞を受賞するのには当然理由があります。
それはただ単に“面白い”というだけでなく、昨今の小説業界への殴り込み的なトリックが読者を奮い立たせるからです。
今回は、相沢沙呼さんの「medium 霊媒探偵城塚翡翠」のブックレビューをネタバレを交えてお届けします。
ネタバレ注意!
記事の前半部分はネタバレ希望の方に向けての【あらすじ】です。
この本を100%楽しみたい未読の方は、回れ右をして本屋に走ってください!(推奨)
- 【あらすじ】 難事件を霊能力で解き明かす新感覚ミステリー!
- 【ネタバレ】最終章で明かされる衝撃の真実!
- 小説業界への殴り込みにも見える翡翠のキャラクター破壊!
- ブロガーなおこさんとのコラボ企画!
- まとめ
【あらすじ】 難事件を霊能力で解き明かす新感覚ミステリー!
主人公の香月史郎(こうげつしろう)はミステリー作家。
心霊現象に悩む後輩の相談をきっかけに、霊能力者(霊媒師)であり“死者の言葉を伝えることができる”城塚翡翠(じょうづかひすい)と出会います。
帰国子女で裕福な家庭に育った翡翠は世間を知らず、働かなくても生きていける資産がありますが、困っている人を救うために自分の霊能力を無償で提供してきました。
そんなある日、心霊現象に悩んでいた香月の後輩が殺人事件に巻き込まれます。
翡翠と共に現場に居合わせた香月は、自力では事件を解決させる手がかりを見つけられませんでしたが、翡翠の霊媒の力によって犯人がすぐに判明することに……。
しかし、翡翠の霊視には証拠能力がないため、香月は翡翠の“霊能力”と、自らの作家としての“論理”の力を組み合わせて犯行を証明していきます。
一方、証拠を一切残さない亡霊のような連続殺人鬼が世間を震撼させていました。
殺人鬼を捕まえることができるとしたら、証拠を必要としない翡翠の力を頼るのみ。
果たして翡翠は、連続殺人鬼の凶行を食い止めることができるのでしょうか!?
様々な事件を解決していく末に、連続殺人鬼の魔の手が翡翠に襲い掛かります!
【ネタバレ】最終章で明かされる衝撃の真実!
「medium 霊媒探偵城塚翡翠」は、4章からなる連作短編集です。
第1話〜第3話はそれぞれ巻き起こる殺人事件について描かれ、いずれも証拠能力のない翡翠の霊能力を香月がカバーして論理付けていきます。
無理やりな設定にも感じますが、矛盾はなく本格ミステリーとして楽しめる内容です。
霊能力はミステリーにご法度とはいえ、香月のロジカルな証明によって事件を解決させていくので一応筋は通っているような……?
そして、最終章で連続殺人鬼との対決が待ち受けます!
最強、最驚、そして最叫のラスト!
物語は「連続殺人鬼とは一体誰なのか?」が焦点となりますが、読み進めていくとどうも香月が怪しいのです。
最終章に差し掛かると香月がサイコパスにしか見えません。
もし香月が犯人だとしたら、ミステリーの掟破り(探偵役が犯人であってはならない)となるので「流石にそれはないかな?」と思いながら読んでいると……。
やっぱり香月が犯人でしたー!
嘘でしょ!? そのまんまじゃないですか!? /(^o^)\ナンテコッタイ!
そして、さらに驚きの事実が判明します!
それはなんと、“翡翠には霊能力が全くない”というのです……!?
え? なんで? どういうこと?
香月が犯人だったことは一気にどうでもよくなりました。
翡翠に霊能力がなかったら、この物語は全て成り立たなくなります。
なにせ、今まで解決してきた3つの事件は、翡翠の霊能力が不可欠でしたから。
これは物語の根底を覆す大事件です!
すべてが伏線となり、回収されていく様は圧巻!
最終章では、香月だけでなく読者である私たちが“翡翠の掌の上で転がされていたこと”を、これでもかというほど思い知らされます。
「わたしが、ほんものの霊媒だって、ずっと信じていらしたんですか——?」
この一言で「翡翠ちゃんかわいい!」とデレデレしていた不届きものは死ぬことになります。
そして、ここから翡翠先生の独壇場のはじまりです!
「今までのお嬢様キャラはどこへやら?」というほどの煽り運転で香月を攻め立てます。
もはや、ずっと翡翠のターンです!
狼狽する香月を相手に、今までいかにして証拠を拾い集め、華麗な推理に至り、犯人を突き止めてきたのかを詳細に語りながら煽っていく翡翠先生。
そうです!
今まで解決してきた数々の事件は、翡翠先生の超人的な推理力によるものだったのです。
だからこの作品のタイトルは「medium 霊媒探偵城塚翡翠」なんですね!
探偵役は香月ではなく、あくまで城塚翡翠なのです!
すべてが伏線となり、回収されていく様はまさに圧巻!
「翡翠先生! そんな超人的な推理は誰にも真似できないよ!」
そんな悲痛なツッコミが心の中で聞こえてきますが、あまりの見事さに感服いたしました。
このミステリーはすごい! まさにその通りです!
小説業界への殴り込みにも見える翡翠のキャラクター破壊!
「medium 霊媒探偵城塚翡翠」の最大のトリックは、犯人が香月であることではなく、“翡翠に霊能力がない”ということです。
このトリックは物語の根底を覆すほどインパクトがあります。
同時に、昨今のキャラクタービジネスと化した小説業界への殴り込みにも見えるのです。
当然といえば当然なのですが、小説業界にとどまらず漫画でもドラマでも、一にも二にもまずはキャラクター。
優れたキャラクターを生み出す小説しか、シリーズ化やメディア化される道はありません。
キャラクターあってこその物語なのです。
“城塚翡翠”という1冊限りのキャラクター!
最終章までの間、翡翠ちゃんはものすごく可愛らしく描かれます。
それはもうあざといと感じるほどに、可愛すぎるのです……!
読み進めるごとに彼女のファンとなった読者が何人もいることでしょう。
しかし、著者の相沢さんは、この翡翠ちゃんのキャラクターを最終章で木っ端微塵に破壊します。
それまでの翡翠ちゃんが可愛過ぎて、最終章で死んだ読者が何人もいるそうです。
私にこの本を教えてくれたサウナ探偵さんも、お亡くなりになられました。
皆さんはいかがでしたか!?
翡翠ちゃん可愛いですよね。
しかし読み終えた今となっては、再読しても、たとえ映画化されたとしても、あの可愛い翡翠ちゃんには二度と戻れないのです。
キャラクタービジネスには頼らず、人気シリーズにはしない!
そんな相沢さんの心意気が垣間見れ、小説業界を越えて読者に対しても挑戦状を叩きつけられたように私は受け取りました。
1度限りの大仕掛を使ったこの作品で、賞を取りまくるのは当然と言えるでしょう。
ちなみに、私も翡翠ちゃんが可愛すぎて死亡した人間の一人です。
こんなに死者を多く出すミステリーも、そうそうありませんね!笑
また、読み終わった今思えば、表紙の翡翠ちゃんのイラストは、妖艶で不敵な笑みを浮かべた翡翠先生の方ですよね。
ここまで大胆なネタバレを表紙でしているなんて、お見それしました。
ブロガーなおこさんとのコラボ企画!
今回のネタバレ書評記事は、ブロガーなおこさん(@sakanao283)とのコラボ企画として実現しました!
Twitterでのやり取りで「同じ本をそれぞれが書評を書きあったら面白いのでは?」という話の流れから、最近読んだ「medium」のネタバレ記事を書くことに……!
いいですね! めっちゃ楽しそう! ぜひやりましょう!
— ユウ@ホンダナ!運営中 (@sutekinayokan) 2020年1月22日
最近読んだ「medium」なんていいんじゃないですか!?
本のネタバレ記事は実は結構あって、不用意にネタバレさせていることもしばしば。
ネタバレが嫌な人も多いので、記事を書く際は「ネタバレ」の表記は絶対に必要ですね。
まだ、なおこさんの記事を読んでいませんが、どんな書評記事なのかとても楽しみです!
是非なおこさんのブログも合わせてお楽しみください!
まとめ
今回は「medium 霊媒探偵城塚翡翠」のネタバレ書評記事をお届けしました。
兎にも角にも翡翠ちゃんのキャラクター破壊が衝撃的な作品です。
全てが伏線となり、最終章で見事に回収し、それを破壊していく驚愕の物語。
本当に構成がよくできています!
実は、今までネタバレ記事に抵抗があったので本格的に書いたことがなかったのですが、なかなか楽しいものですね!
ここまで物語を掘り下げてレビュー記事を書くことができるという点に、新たな楽しみを見出す結果となりました。
もし良かったらコメントをお待ちしております!
ネタバレ記事についての感想はもちろん、他にも今後読んでみたい記事のリクエスト(本に関わることでしたらなんでも!)など、どしどしお寄せください!!