マイケルジャクソン著「モルトウイスキー・コンパニオン」はウイスキーのバイブル!

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何を隠そう私はウイスキーが大好きです。

中でもシングルモルトウイスキーには思い入れがあり、ちょっとした飲み屋に負けないくらい沢山のボトルを所有している程……!

シングルモルトとは大麦麦芽のみを使用して単一の蒸留所で作られるウイスキーのことを指しますが、産地や蒸留される方法によって味わいは様々。

種類も豊富で奥が深く、ハマると味わいだけでなく歴史や生産背景にまで興味を持つようになります。

そんな時に手引書としてオススメなのが、かの有名なスーパースターと同姓同名のウイスキー評論家マイケルジャクソン氏の名著「モルトウイスキー・コンパニオン」です。

これを読まずにシングルモルトを語ることはできません!

今回はウイスキー通の必読本である「モルトウイスキー・コンパニオン」を紹介します。

モルトウイスキー・コンパニオンについて

今回紹介する「モルトウイスキー・コンパニオン」は、ウイスキー評論家であるマイケル・ジャクソン氏が書いた本です。

スコッチのあらゆる情報が書かれた本書は、1989年に初版が刊行されてから、世界中のウイスキー愛好家に読み解かれ“ウイスキーのバイブル”として版を重ねてきました。

「コンパニオン=手引き」という意味ですが、その名の通りモルトウイスキーの楽しみ方を導いてくれます。

著者はウイスキー評論家のマイケル・ジャクソン氏

大変恥ずかしい話ですが、私は10年以上の間「キング・オブ・ポップのマイケルジャクソン」が著者なのだと思い違いをしておりました。

「ウイスキーが好き」が聞いて呆れますが、BARなどで間違った情報を披露して恥ずかしい思いをしないように皆さんはお気をつけください!

ちなみにウイスキー評論家のマイケル・ジャクソン氏はビールにも精通し書籍も出版しており、「キング・オブ・ホップ」と呼ばれています(笑)

詳しい人物紹介はこちらのウィキペディアをご参照ください。

ja.wikipedia.org

2019年現在、市場に出回っているのは2種類

日本語に翻訳されたものが刊行されたのは2000年版(第4版)と、2005年の改訂版(第5版)、そして2011年の最新版(第6版)の3冊です。

2005年改訂版(第5版)の刊行時に100ページ以上ボリュームアップして、より充実した内容になりました。

マイケル氏が亡くなったのは2009年ですが、それよりも後の2011年に再度内容が改訂されたモルトウイスキー・コンパニオン最新版(第6版)が刊行され現在に至ります。

初めて日本語に翻訳された2000年第4版はもう市場には出回っていませんが、亡くなられる前に書かれた2005年改訂版に関しては、中古でしたらアマゾンなどで買うことができます。

私は2000年に翻訳版として日本で初めて発売された第4版と、2011年に発売された最新版の2冊を持っています。

今回の記事では、2バージョンに共通する感想に加え、比較して感じたことについても語っていきます。

800以上のモルトのテイスティング・ノートを掲載

メインで書かれる内容は、800以上のモルトウイスキーの「色」「香り」「味わい」などの特徴を記録したテイスティング・ノート。

「モルトウイスキー・コンパニオン」の面白い点は、“世界一のウイスキー愛好家”といっても過言ではないマイケル氏のテイスティング・ノートを見ながらウイスキーを楽しめることです。

世界で最も有名なウイスキー愛好家であったマイケル氏のテイスティング・ノートには興味があります。

マイケル氏はテイスティング用の蓋つきのグラス“マイケルジャクソンズウイスキーコニサーグラス”を独自にプロデュースするほどウイスキー業界ではその名が知られています。

ちなみにマイケル氏のグラスは、どのショップでも常に売り切れで買えません。

ありとあらゆるウイスキーを嗜んできたマイケル氏が、私が飲んでいるモルトをどのように表現したのかを知ることは非常に興味深いです。

また、テイスティング・ノートを参考にしながら味わうことで、ウイスキーの持ち味をより正確にイメージすることができるため、味わい方の指標にすることができます。

「どれを飲んでも味がよくわからない」というウイスキー初心者の方は、テイスティング・ノートを見ながら飲むことで、銘柄や熟成年数ごとの繊細な味わい方を知るきっかけにもなります。

掲載しているモルトはすべて採点されている!

さらに興味深いのが、「モルトウイスキー・コンパニオン」で紹介される1つ1つの銘柄に「点数」がつけられているところです。

例えば、「グレンリベット12年は85点」「クラガンモア・ダブルマチュアードは90点」といった感じで数値化されています。

採点されるモルトは熟成年数変わり樽シリーズ(通常の樽から詰め替えて熟成させたもの)なども網羅されており、見応えがあり面白いです。

マイケル氏の独断と偏見なのかと思いきや、極端に高い点数や低すぎる点数が付けられることは少なく(65点〜85点が中心)、中立的に採点されている印象を受けます。

しかし、1つだけべた褒めしているとあからさまに感じる銘柄があります。
それはやはり「マッカラン」です。

「シングルモルトのロールスロイス」と称し、マイケル氏が最も愛したお酒。

マッカランのページを見ると、愛してやまない熱い思いが伝わってきて、贔屓にされていることがかえって微笑ましく……というか、思わず笑ってしまうほど差を感じます。

その証拠にマッカランのページだけ26ページも割いており、他の蒸留所の10倍くらいのボリューム……!笑

ちなみに、100点満点で最高点が付けられているのも当然「マッカランのレアボトル」で採点は96点。

確かにマッカランは素晴らしいモルトなので過大評価には感じませんが、とにかくマイケル氏の愛情を突出して感じます。

この大胆な採点は、世界的なウイスキー評論家であるマイケル氏であるからこそできたもの。

並みのウイスキー評論家には真似ができません!

初心者でもウイスキー通でも楽しめる豊富な情報

「モルトウイスキー・コンパニオン」はテイスティング・ノートの他にも、「モルトウイスキーの定義」「スコッチの歴史や成り立ち」などの情報も記載されています。

スコッチの地域ごとの特徴や原材料の説明、ポットスチル(蒸留器)や熟成樽の解説なども書かれているため、これからウイスキーを覚えていきたいと考えている方の教本としてもオススメです。

ページ数にボリュームがあり内容もしっかりしているので、普段からウイスキーを飲み慣れている方でも楽しめます。

ただし文字ばかりで図解などはないため、初心者の方がより理解を深めたい場合はウイスキーの入門書を読む方がわかりやすいです。

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私はお酒の本を読むのも好きなのでたくさん所有しておりますが、ウイスキーの入門書としてオススメするのは、橋口考司さんの「ウイスキーの教科書」

写真やイラストが豊富で、ウイスキーの歴史や作られ方などわかりやすく丁寧に解説されており、まさにウイスキーの教科書と言える内容です。

100を超えるスコッチ蒸留所の情報が満載!

閉鎖や新設によって出版年ごとに変動が有りますが、2000年刊行の第4版ではスコッチ116の蒸留所、2011年刊行の最新版では112の蒸留所の最新情報を詳細に解説しています。

その内容はホームページや住所、電話番号や地図などのマニアックすぎる情報まで……!

操業した年や当時の歴史的背景蒸留所の名前の由来など、各蒸留所ごとの特筆すべき情報が満載です。

この蒸留所の歴史やこだわりを知ることがウイスキーの楽しみ方の1つ。

昔ながら製法を変えず手作業で麦芽を仕込んでいる蒸留所や、こだわりの樽を自作している蒸留所など、その背景を知ることでまた別の味わい方のヒントにも繋がります。

蒸留所の歴史を知るおもしろさ

蒸留所の歴史を知る面白さの例として、「CARDHU(カードゥ)」という蒸留所が挙げられます。

ジョニーウォーカー(様々なシングルモルトを混ぜて飲みやすく造られるブレンデッドウイスキーの有名な銘柄)の核原酒であるカードゥは、女性が蒸留所経営に力を発揮した蒸留所です。

創業者ジョン・カミングの妻であるヘレンは農場に建てられた違法な蒸留所の経営に手腕を発揮し、そこを受け継いだ嫁のエリザベスが合法な蒸留所に発展させ、かの有名なジョニー・ウォーカーのキーモルトにまでなったという歴史を持ちます。

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中身が残り少なくて残念……!

そんな女性が活躍した蒸留所カードゥのボトルをよく見ると、くびれがあって女性的なデザインなんですよね。
ボトルのネックの部分にもうっすら女性らしき人物が描かれています。

味わいもライトで飲みやすくバニラのような甘さが華やかなで女性らしさを感じさせます。
デザートにも合わせやすそうなモルトです。

このように、蒸留所の歴史や生い立ちを知ることでボトルの形状などに意図を見つけることができ、ウイスキーの楽しみ方が増えていきます。

マイケルジャクソン氏の亡き後も受け継がれる

マイケル氏が亡きあとは、その意思を引き継いだドミニク・ロスクロウ氏、ギャビン・スミス氏、ウィリアム・C・マイヤーズ氏の3名のウィスキー評論家の手によって編集され、より現代のウイスキー事情に合致した内容に改訂されました。

最新版ではもう手に入れることができない500本のボトルが削除され、新たに500本のボトルが追加されるなど内容が大きく変わっています。

結果的にテイスティング・ノートも半分以上が新しく更新されました。

他にも新しく誕生した蒸留所や、世界のウイスキー事情にも焦点を当てたブレンデッドウイスキーにもメスを入れた内容も掲載されています。

私が持っている第4版と比べるとかなりボリュームアップした印象です。

マイケル氏の名前を使い続けることに賛否両論ある

マイケル氏が亡くなられた後も名前を使い続けることに違和感を持つ人もいるため、最新版はAmazonでのレビューも賛否が分かれています。

それに対し私ははっきりと肯定派であるとお伝えしたいです。

なぜなら、マイケル氏の亡きあと刊行された最新版にも確かにマイケル氏の意思を感じるからです。

最新版の序章にも書かれていますが、「マイケル氏の文章のスタイルに可能な限り忠実であろうとし、彼と同じ方法でウイスキーに点数をつけることを努力した」とあります。

ウイスキーの味わい方は主観的な部分が強いため、マイケル氏と同じ方法を完全に踏襲することは容易ではありませんが、3人のウイスキーライターたちは「マイケルならどのような点数をつけるか」に主眼を置いてこの本を完成させました。

また、マイケル氏の名前を使い続ける理由も序章で述べられていますが、それはマイケル氏への敬意であると読み取れます。

「マイケル氏の名前を使った方が売れる」という商業的な意味合いもあるとは思いますが、結果ウイスキー業界が潤うのであればそれもマイケル氏にとって本望ではないでしょうか。

第4版も最新版もそれぞれに良さがある!

第4版も最新版もそれぞれ良さがあり、私はどちらかを否定する気持ちにはなりません。

もしどちらを購入するか迷われる場合は、実際に手に入るボトルのテイスティング・ノートを参考にしたい場合や、ウイスキー初心者の方は最新版がオススメです。

一方、マイケル氏が編集をしていた2000年刊行の第4版と2005年改訂版は、マイケル氏本人の意思を100%感じ取れる貴重な1冊。

「ローズバンク」や「ポートエレン」など操業を停止した蒸留所のボトルのラベルなども多数紹介されており、よりマニアックな情報を手に入れたい方やマイケルジャクソン氏の熱狂的なファンの方は、2005年改訂版をオススメします。

第4版と最新版を実際に比較してみた!

マイケル氏が亡き後に刊行された最新版はどれほど内容が変わったのか、実際に第4版と最新版を比較してみました。

各産地の主要銘柄を無作為に選び、「第4版」「最新版」それぞれに付けられた点数と、テイスティングコメントの違いを20銘柄ほど調べ、何点か抜粋して表にしました。

銘柄 第4版 最新版 コメント
グレンモーレンジ18年 81点 80点 ほぼ同じ
エドラダワー10年 81点 81点 かなり違う
ブレアソール12年 記載なし 78点
グレンリベット12年 85点 85点 全く同じ
グレンキンチー10年 76点 記載なし
タリスカー10年 90点 90点 全く同じ
ボウモア12年 87点 82点 かなり違う
ラフロイグ10年 86点 86点 ほぼ同じ

20銘柄中5銘柄のテイスティングコメントや点数がかなり変わっていました。
2銘柄はいずれかに記載がなく、その他の13銘柄は点数も内容も変化なしです。

ブレアソール12年は2000年に発売が開始されたボトルなので第4版には当然載っていません。
最新版はこういった新しいボトルが更新されています。

しかし、グレンキンチーはなぜか最新版に載っておらずその理由がわかりません。
モエヘネシーディアジオ社という巨大企業の所有する蒸留所なのですが……。

最後に、テイスティングコメントがほぼ同じ銘柄と、かなり変わった銘柄はどのような違いがあるのかを紹介します。

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左が第4版、右が最新版のグレンモーレンジ18年

グレンモーレンジ18年は点数もテイスティングコメントもほぼ変わりません。

微妙な違いはありますが、どちらも違和感はありません。

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左が第4版、右が最新版のエドラダワー10年

エドラダワー10年は同じ点数ですが、テイスティングコメントがかなり変わりました。

最新版ではコメントが簡潔になって手抜きのように見えなくもないですが、私が個人的にエドラダワー10年を飲んで感じるコメントは最新版の方が近いです。

マイケル氏のテイスティング・コメントとはかなり違いますが、最新版が信頼できないという内容では決してありません。

ラベルなども変わっているので、資料的な楽しみ方もできますね。

まとめ

「モルトウイスキー・コンパニオン」はウイスキー通だけでなく、これからウイスキーを覚えたいと考えている方にもオススメの一冊です。

味の特徴と点数がつけられているので、何を飲んだらいいのか検討もつかない方でもウイスキー探しの指標にすることができます。

もしマッカランが好きな方でしたらマイケルジャクソン氏の意見にどっぷり乗っかって、点数が高いモルトを選んで飲んでみるのもいいですね。

スコッチは産地ごとの味わいにかなり違いがあるお酒のため、何も知らずにボトルを購入すると「失敗した!」と思うことがあるかもしれません。

手元に1冊テイスティング・ノートがあるとそんな失敗も防げるので便利ですよ。

今宵の1杯のお供に「モルトウイスキー・コンパニオン」を是非手にとってみてください!